第98回全国高校野球選手権千葉大会4回戦で、東京学館浦安の右腕エース黒田航平投手(3年)が、敬愛学園を相手に9回ノーヒットノーランを達成した。6回に1度は「H」ランプがともったが、試合後に記録が失策と訂正された。

 黒田は試合直後、1安打完封のヒーローとして報道陣に囲まれた。「意識はしていた。でも1点差でも勝てればいいので。落ち込まなかった」。1安打への後悔の気持ちは見せなかった。6回2死一塁。三塁ゴロが一塁に送球され判定はセーフ。スコアボードには「Hランプ」がともった。大記録の重圧は消えた。その後もスローカーブを有効に使い「1安打完封勝利」を成し遂げた。

 しかし、遅れてきた記者の1人が衝撃的な事実を告げた。試合後に記録が訂正された。6回の「H」は一塁失策となった…。つまり、ノーヒットノーランの達成だった。黒田は驚いた。あらためて心境を問われ「うれしいです。公式戦では初めて」と素直に喜んだ。

 努力のエースだ。小学時代は投手だったが、右ひじを故障した。不安を覚え、中学では投手を断念。高校入学後は遊撃手としてプレーした。だが1年の秋から「試合を作れて楽しい。どんどんはまっていきました」とマウンドに立つことを再び志した。制球に苦しみ、昨秋の県大会時は背番号「20」だった。どん底の状態でも、投手陣が愛用する練習道具「投げドル」を用いてリリースポイントを確認した。投げ込みも行い、制球を磨いた。努力が実り、今春に背番号「1」を獲得した。「候補でもなかった。エースナンバーを取れてうれしかった」。

 好投の要因のスローカーブは、今春の県大会前から習得を目指してきた。練習試合では高めに浮き、痛打を繰り返した。それでも諦めることなく挑み続け「試合中に感覚をつかんだ。使えるなと思った」と、最後の夏に間に合った。この日を振り返り「制球とスローカーブのおかげ」と笑顔で答えた。次は21日に8強をかけて、千葉敬愛と対戦する。「気が抜けない相手だが、今日の試合は自信となった。昨秋のベスト4を超えたい」と、さらなる快挙を誓った。【秋吉裕介】

 ◆黒田航平(くろだ・こうへい)1998年(平10)5月5日、東京都墨田区生まれ。兄の影響で小1から上篠崎ムスタングクラブで野球を始める。好きな料理はすしで、特に大トロが大好物。家族は両親、兄、弟。172センチ、62キロ。右投げ右打ち。

 ◆投げドル 理想的な投球フォームを身につけることを目的に開発された練習道具。紙鉄砲のように振って、良い音が鳴れば正しく投げられている証拠になる。小中学生の選手を中心に好評という。