早実(東京)の清宮幸太郎内野手(2年)が、今季最後の対外試合で2本塁打を放って高校通算本塁打を78本に伸ばした。磐城(福島)野球部創部110周年記念試合に「3番一塁」で出場。第1試合の第2打席、両翼100メートルの右翼席最上段へ推定120メートルの特大アーチをかけた。6回の第4打席は、昨年5月の練習試合以来となる逆方向への1発。今年3月から約9カ月で56本塁打を量産した。今秋の都大会優勝で出場をほぼ確実にしている来春センバツへ、進化が止まらない。

 清宮が、納得の2発で16年を締めくくった。3回は右投手の内角低め直球を捉え、もう少しで場外の特大弾。6回はカウント0-2と追い込まれながら、左投手の外角直球を左中間席に運んだ。「逆方向のホームランは(昨年5月の)九州国際大付以来なので、今年は初です」と、高校で唯一の流し打ちアーチを鮮明に記憶していた。「なかなか出ない当たりだったし、左投手から意識して打てたのは収穫。今まで以上にいいホームランだった」。今年を締めくくる1発で、止まらない進化を証明した。

 3回の特大2ランは、相手からも祝福された。ダイヤモンドを1周した直後、磐城の高橋啓太捕手(2年)から手を差し伸べられた。清宮は素通りしかけたが、1歩戻って「ありがとう」と左手でタッチ。異例の行動に出た高橋捕手は「相手とタッチしたのは初めて。悔しいを通り越してすがすがしかったので、思わずやりたくなった」と笑った。

 東日本大震災の被災地で2020年東京五輪の野球・ソフトボールの開催が濃厚な福島のファンを喜ばせた。13年に同球場で開催された「プロ野球マツダオールスターゲーム」でも、日本ハム大谷らが出場しながらも出なかった本塁打。大拍手に、清宮は帽子を取って応えた。「これだけ広い球場で試合ができたし、(拍手は)東京のほうだとなかなかない。うれしいですけど、恐縮です」と照れた。

 未来の球界を担うスター候補生も、素顔は17歳の高校生だ。前日19日の夜は磐城高の合宿所で一夜を過ごした。夕食時には隣に座るチームメートから果物を“横取り”したり、磐城の部員と学校生活や恋愛話で盛り上がった。清宮は「自分たちが過ごしやすいように気遣ってくれて、感謝しています」。超高校級の成績を残しながらも、素直で、礼儀正しいキャプテンだ。

 入学当初から目標に掲げた80発も目前に迫り、厳しい冬の練習に入る。清宮は「チームのために、という思いで打った数字なので満足できる。この冬で、飛距離は伸びる余地がある」と言った。歴代高校通算最多とされる107発も、念願の日本一も、清宮には不可能ではない。【鹿野雄太】

 ◆清宮の本塁打ペース 清宮の高校通算本塁打は78本(1年22本、2年56本)。通算107本で最多とされる山本大貴(神港学園-JR西日本)は2年秋までに84本(1年29本、2年55本)で、3年時に23本。87本の中田翔(大阪桐蔭-日本ハム)は2年までに68本で、78号を記録したのは3年の5月20日だった。

 ◆復興五輪 野球・ソフトボールは横浜スタジアムを主会場とする方針が固まっているが、政府は東日本大震災からの復興をアピールするため日本戦を含む一部の試合を福島県で実施することを検討中。現時点では福島市が有力だが、いわき市と郡山市も候補に名乗りを上げている。19日には世界野球ソフトボール連盟のフラッカリ会長が県営あづま球場(福島市)と開成山野球場(郡山市)を視察した。