第89回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)の選考委員会が27日、大阪市内で開かれ、昨秋の東海大会で優勝した静岡の2年ぶり16度目のセンバツ出場が決定した。吉報に歓喜した部員29人の目標は、同校では戦後初の4強以上。チームスローガンを「和」と掲げ、本番に向け気持ちを引き締めた。組み合わせ抽選会は3月10日に行われる。

 午後3時19分、センバツ出場を告げる電話が、校長室で鳴った。連絡を受けた鳥居春仁校長は、すぐにグラウンドで待つ選手たちに吉報を届けた。29人の部員は笑顔を浮かべ、OBら約30人は万歳三唱。小柳廉主将(2年)は「まだ通過点。どこが相手でも自分たちの野球ができればと思います」と気を引き締めた。

 「2年生全員がキャプテン」。その心持ちがチームワークの良さを支えている。今の静高には「副主将」がいない。2年前は安本竜二主将のもと、堀内謙伍捕手と鈴木太郎内野手が、昨年の鈴木将平主将の代では、村木文哉投手と赤堀史弥内野手が副主将を務めた。だが、今年の打線には堀内、鈴木将のような突出した存在はおらず、「つなぎの野球」で甲子園をつかんだ。そこで栗林俊輔監督(44)が、「今の選手たちにはこの形が合っている」と、副主将を置かないことを決断した。副主将は主将を支え、選手のまとめ役を担うが、それ以外の選手が「チームのことは主将と副将に任せればいい」と考えるようになっては、「和」をもってなすチームの良さが消えてしまうからだ。

 狙いは当たった。小柳主将の下、次第に上級生全員がチーム全体のこと考え、気持ちの部分でもつながるようになった。森康太朗捕手(2年)は言った。「最初は小柳に頼り過ぎた部分もあったけど、今は言いたいことを言い合える関係になってきた」。大石哲平内野手(2年)が「内野は自分と稲角(塁=2年)で引っ張っていこうと意識しています」と言えば、前田優太外野手(2年)も「外野は自分が責任を持って引っ張る」と自覚十分だ。

 先輩の鈴木将も「リーダー格の選手がたくさんいるのが彼らの長所」と分析する静高の強み。残り2カ月で各個人がスキルを上げ、さらに「和」を強化すれば、目標の戦後初の4強、全国制覇も現実味を帯びてくる。【鈴木正章】

 ◆静岡 1878年(明11)静岡師範学校中等科として創立された県立高校。生徒数は976人(女子409人)。野球部は1896年創部で部員数は29人。甲子園は夏24回、春は16回目の出場。所在地は静岡市葵区長谷町66。鳥居春仁校長。