第89回選抜高校野球大会が19日、甲子園で開幕した。静岡ナインは観客約4万2000人が見守る中、開会式で堂々と行進した。

 「イチ、ニー!」。かけ声を張り上げた竹内奎人投手(3年)には特別な思いがあった。三塁側スタンドで祖父村串泰司さん(82)と祖母悦子さん(75)が観戦していた。泰司さんは竹内が中3時に脳梗塞で倒れた。当時、「僕がおじいちゃんを甲子園に連れて行く」と誓った竹内は「目標をかなえられました」と笑顔。懸命なリハビリで歩けるようになった泰司さんも「素晴らしい夢をくれました」と目を細めた。

 しかし、竹内は不調続きで、春翔一朗投手(2年)に2番手投手の座を明け渡している。厳しい状況だが、ネットスローを繰り返して投球フォームを確認。「だいぶ良くなってきました。次は甲子園のマウンドに立つ姿を祖父に見せたいです」。大会5日目(23日)、不来方戦(岩手)との1回戦まで残り3日。孝行孫は決してあきらめない。【鈴木正章】