「あらがね魂」を見せつける!

 春季高校野球東北大会(6月5日開幕、福島県内2球場)の組み合わせ抽選会が29日、福島市内のホテルで行われた。創部57年目で初出場となる大館工(秋田)は1回戦で日大山形と対戦。地元やOBの協力で冬季の練習環境を克服し、みちのくの強豪校への挑戦権を得た。鉱山の町の伝統校ナインが、かた~い結束力で、まずは1勝を目指す。

 ハイ!

 大きな返事で席を立ち、くじを引くと深々と頭を下げた。礼儀正しく抽選会に臨んだ大館工・小貫碩人主将(3年)は「県立校らしく、泥くさい野球を見せたい」と笑顔で抱負を語った。春秋通じて初めて挑む大舞台に、感謝の気持ちを込めて挑む。

 大館市内のグラウンドが豪雪に覆われる冬季。いまだ甲子園出場校を持たない市の協力で、室内練習施設の大館樹海ドームを割安で借りる。毎年6月の1週間に及ぶ集中合宿ではOBが駆けつけ、ノック係を務めてくれる。小貫は「夏に恩返しを果たすためにも、まずこの大会で結果を残したい」と意気込む。

 技術者育成のため53年、戦前から銀や亜鉛などを採掘した花岡鉱山の近くに設立された。当時の花岡工時代から、学校のスローガンとして「あらがね魂」という言葉がある。「あらがね」は精錬される前の金属の原石で、磨けば光るという意味で学生の精神を表す。

 地区予選で左ひざ靱帯(じんたい)を断裂し、県大会は出場できなかった小貫は「チームが日本一の元気で、東北大会出場をかなえてくれた。みんなと『あらがね魂』で頑張りたい」。堅いチームワークは、そう簡単には砕かれない。【由本裕貴】