<高校野球・春季北海道大会:駒大苫小牧5-3札幌創成>◇3日◇準々決勝◇札幌円山

 駒大苫小牧が札幌創成を5-3で下し、2年ぶりの4強進出を決めた。1-0で迎えた6回2死一塁、続く7回2死二、三塁と2度のピンチに、新田光中堅手(3年)がダイビングキャッチを連発。スーパープレーで窮地を脱し、勝利につなげた。相手打者の構えなどで守備位置を細かく変更する緻密(ちみつ)な野球で接戦をものにし、強豪健在をアピールした。

 夏の甲子園連覇の偉業を達成した時代をほうふつとさせる、ビッグプレーが出た。7回、駒大苫小牧は2死二、三塁のピンチを迎えた。リードは1点。一打逆転の場面で、札幌創成斎藤の打球が中堅へ飛んだ。守っていた新田は猛然と前進する。頭から飛び込み、落ちたと思われた飛球を、地面すれすれのところでキャッチした。ヒットなら逆転されていた場面、新田の好捕でピンチを脱した。「打たれた瞬間、逆転を覚悟した。ファインプレー」と茂木雄介監督(28)は称賛した。

 伝統校らしい綿密な戦略が好捕の陰にあった。駒大苫小牧は打者の構え、内野の守備位置、投手の状態を考えて、1球ごとに守備位置を変える。木村竜也投手(3年)の球が走っていたため「打球は詰まる」と判断。二塁走者の生還を許さないため、外野は前進守備を敷いていた。加えて新田が「見た瞬間、捕れると思って、1歩を踏み出した」と迷わず動けたのも、日ごろの猛練習によって生まれたもの。日々の積み重ねが、大事な場面で結果となった。

 4月、04年夏の甲子園優勝時の主将、佐々木孝介コーチ(22)が母校に戻った。「1球1打に集中する気持ち」を、選手は何度も説かれた。栄光を知る指導者の現役時には実力こそ及ばないが、その魂はしっかり受け継がれている。この試合、攻守にわたる全力プレーで、随所にその片りんを見せた。

 07年秋から指揮を執る茂木監督にとって、初めての全道4強進出になった。試合終了の瞬間には、思わず笑みもこぼれた。「接戦でいい試合だった。これから先、選手にも自信になる」。新田の守りを筆頭に、教えが形になっての勝利。指揮官は夏の“復活”に向けて手応えを感じ取っていた。【中尾猛】