<明治神宮大会:大垣日大10-9東海大相模>◇19日◇高校の部決勝◇神宮

 大垣日大(東海・岐阜)が東海大相模(関東・神奈川)を10-9で破り、史上13校目の初出場初優勝を飾った。雨中の戦いは、最大5点リードされた大垣日大が、5-9の8回に森田将健外野手(2年)の適時打で追いつき、9回には相手エース一二三(ひふみ)慎太(2年)のボークで決勝点。そのまま逃げ切り、来春センバツの神宮枠は東海地区が得た。

 降りしきる雨の中、8回途中から救援の阿知羅(あちら)拓馬(2年)が反撃をしのぎきった。9回1死一塁から大城を自己最速140キロ直球で空振り三振、牧島は三塁ゴロ。万感の思いで両腕を突き上げた。

 まさかに始まり、まさかで終わった。雨にぬれた人工芝で野手が足を滑らせ、失策が続出。3回は三塁手と二塁手の悪送球に足を引っ張られ、1年生エースの葛西(かっさい)は6点を失う。こつこつ追い上げ、7回に1点差に迫ったがその裏に3失点。5-9と差が開き、肩を落とす1年生を見て、百戦錬磨の阪口監督も「勝負あったか」とくちびるをかんだ。

 だが8回、今度は相手のミスに乗じた。先頭の安藤が四球で出塁。3安打で2点差に迫り、なおも1死一、二塁。ついにエース一二三が登板も、2死二、三塁から森田が左前に適時打。左翼からの返球を受けた捕手の落球で追いついた。

 決勝点は、一二三のまさかのボーク。9回、先頭の後藤が右中間を破る三塁打で突破口を開き、無死一、三塁。打者・高田にカウント2-2から5球目を投げようとした一二三がプレートで足を滑らせ、投球できずにボークが宣告された。

 好救援の阿知羅は宮崎・三財中時代、中学ジャパンにも選ばれた逸材。今夏の岐阜大会は1番を背負ったが甲子園に届かず、8月中旬に右股(こ)関節を故障。葛西の台頭もあり、県大会も東海大会も登板はなし。背番号も10になり、監督から時には鬼の形相で叱咤(しった)された。ただ「先生の言葉の裏を考えました。ぼくの気持ちがゆるまないよう、厳しい言葉をかけ続けてくれた。先生の笑顔が見たかった」と必死に投げた結果が報われた。

 初出場で東海地区2年ぶりの優勝で、センバツ出場枠も勝ち取った。「奇跡というか、野球の重さ、怖さを知りました」。声を震わせた指導歴43年目の阪口監督は、教え子の手で神宮の空に舞った。【堀まどか】