第82回選抜高校野球大会(3月21日から12日間、甲子園)の選考委員会が29日、大阪市内であり、出場32校が決定した。夏の王者・中京大中京(愛知)は3年連続30度目の出場で、史上初の「2度目の夏春連覇」を狙う。昨秋の神宮大会覇者・大垣日大(岐阜)は3年ぶり2度目、三重は15年ぶり10度目。沖縄からは“基地の町”にある嘉手納、強豪・興南が史上初のアベック出場。急逝した元阪神・小林繁さんの教え子がいる敦賀気比(福井)も出場する。組み合わせ抽選会は3月13日に行われる。

 寒風吹くグラウンドで、主将の磯村嘉孝捕手(2年)は言い切った。「夏春連覇をしたいです。夏に経験しているんで、個人的には甲子園にまた戻っていけるという感じです」。自分たちだけが権利を持つ偉業への挑戦を堂々と宣言した。

 長い高校野球史で「夏春連覇」をしたのは、中京大中京(当時中京商)を含む4校だけで、2度達成した学校はない。メンバーが入れ替わるため「春夏連覇」よりハードルは高いが、バッテリーは昨夏Vの経験者だ。土壇場で驚異的な追い上げにあった日本文理(新潟)との決勝で、森本隼平投手(2年)-磯村は日本一の瞬間を味わった。大藤敏行監督(47)も「バッテリーが残っているのは強み」という。

 夏の全国制覇の影響で、新チームのスタートは大幅に遅れた。ようやく始動できたかと思えば、学校にA型インフルエンザがまん延して活動を自粛する羽目に…。昨秋ドラフトで広島に2位指名された、前チームのエース兼主砲・堂林翔太(3年)のようなプロ注目の逸材はいない。しかし、チームには二重三重のハンディを乗り越えてきたたくましさがある。

 年末年始は異色の「郵便配達トレーニング」で体と心を鍛えてきた。昨年12月23日から1月4日まで、練習を休みにして、部員全員が自宅近くの郵便局で年賀状配達などのアルバイトをこなした。自転車をこいでの配達で、まずは体力アップ。さらに、バイト料は部費の足しにするとともに、いつも自分たちを支えてくれる親に「恩返し」として手渡したという。“孝行球児”たちに、この春も甲子園の主役を張る準備は整った。【八反誠】