<国体高校野球:興南8-2仙台育英>◇29日◇1回戦◇千葉・銚子市野球場

 2度目の王者への挑戦は、真っ向勝負で華々しく散った。仙台育英(宮城)は、甲子園春夏連覇の興南(沖縄)に敗れた。最後はまたも力の差を見せつけられたが、高校日本選抜の最速145キロ左腕・木村謙吾(3年)を中心に7回まで2-3と接戦。奇跡的なプレーで今夏甲子園16強に駒を進めた、ミラクルナインの高校野球が幕を閉じた。

 誰もが笑顔を絶やすことはない。全国制覇のために仙台育英に入学し、野球だけを考えてきた3年間。この日が最後の金属バット、最後の試合。ナインの明るく、さわやかな表情に、その思いがにじみ出ていた。

 今大会、背番号3で挑んだ左腕エース木村も1球1球に思いを込めた。2回、日本選抜の米国遠征でともに戦った春夏V投手、島袋洋奨(3年)と対戦。1死二塁。初球からストレートを続け、3球目を中越えへはじき返され先制を許した。

 互いの初打席は直球で勝負したい-。ホームステイ先でパートナーだった2人は、そう考えていた。エリザベスという同年代の女友達もでき、テレビゲーム「Wii」も楽しんだ。そんな球友との真剣勝負に「あいつの球は見えなかった」とたたえ「最後に日本一のチームとやれて悔いはない」。高校最後の登板は7回2/3、8失点だったが、晴れ晴れとしていた。

 主将の井上信志三塁手は守備位置でほえ続けた。相手打者に「ビビってんのか!」などとプレッシャーをかけるのは宮城大会からの恒例。その威勢の良さに銚子市民からは歓声が上がった。応援団長としてチームを裏から支え続けた鈴木亮平投手(ともに3年)も初めて背番号をもらい、ベンチから声を出し続けた。

 「高校野球は力だけじゃない、と思わせてくれた代」と佐々木順一朗監督(50)。甲子園で大活躍した日野も三瓶も努力だけで、はい上がった。井上は「いい仲間とやれてよかった」。主将の重責から解放されることが、少し寂しそうだった。【三須一紀】