<アジアAAA選手権:日本23-0香港>◇28日◇予選ラウンド◇保土ケ谷

 今秋ドラフト上位候補の聖光学院(福島)歳内宏明投手(3年)が開幕マウンドで盤石の投球を見せた。先発し3回5三振。武器である魔球、スプリット・フィンガード・ファストボール(SFF)はわずか2球だけだったが、打者9人を完全に抑えた。高校日本代表が6回コールドで香港に圧勝、4投手のリレーで無安打に封じた。

 格下相手に、手の内を見せる必要が全くなかった。歳内が投じた全32球のほとんどが真っすぐ。緩い“スラーブ”より少なかったSFFは1回の2番打者への4球目と2回の5番打者への3球目のみで、いずれも追い込んで空振り三振を奪った。「相手に力がなかったので、真っすぐで押していこうと思った」と直球主体の理由を語った。

 今夏甲子園で球数のほぼ半数を投じた魔球を封印した形となったが、ネット裏では歓迎する声も上がった。東北担当のヤクルト八重樫スカウトは「あの感じで投げてくれるといいね。真っすぐを磨かないと、あれだけのスプリットを持っていてもプロでは抑え切れないことがあるから」と元捕手の視点を交え、また将来性を考慮して話した。

 9月2日までの6日間で5試合戦う今大会。この日は先発だったが、指揮を執る渡辺元智監督(66=横浜)には抑えの構想もある。それを心得る歳内は「どこで投げても自分の仕事をしっかりやろうと決めて(代表に)きた。自分の力を出せるようにやる」と勝負を決するそのときに、魔球の威力を発揮させる。【清水智彦】