<春季高校野球岩手県大会:花巻東11-4専大北上(8回コールド)>◇25日◇2回戦◇八幡平市営球場

 岩手では今秋のドラフトの超目玉、花巻東・大谷翔平投手(3年)が専大北上戦でセンバツ後初の公式戦マウンドに上がった。先発して3回までは完全、7三振を奪ったが、四死球と安打で逆転を許した4回から急変。6回には4連続四死球と暴投で失点し、この回で降板した。それでも冬に覚えたフォークを多投するなど、夏に向けて明確なテーマを持ったマウンドだった。

 不完全燃焼に終わったセンバツから2カ月。今春の公式戦4戦目にして初めて上がったマウンドで、大谷がいきなり本来の力を見せつけた。スピンの利いた直球で打者を追い込み、フォークで空を切らせる。「真っすぐでカウントを取り、決め球にフォーク」の意図通り、3回までに7三振の圧巻の内容。満員のスタンドも色めき立った。

 日本ハムなど5球団6人のスカウトは「バランスがよくなった」と口をそろえた。甲子園では上体が突っ込み、制球が乱れた。花巻に戻ってからは、下半身主導のしなやかなフォーム固めに時間を割いた。「横投げ」を防止するため、得意のスライダーを強豪校との練習試合で封印したことも。最速151キロの直球もこの日、148キロまで復活。193センチの全身をスムーズに駆動させ、糸をひくような球がミットに吸い込まれた。

 だが、「2カ月前の大谷」が顔をのぞかせ始める。1-0の4回、四死球で1死二、三塁。4番真山一真(3年)に左中間を割られて逆転を許し、「2巡目で慎重にいきすぎた」と悔いた。佐々木洋監督(36)は「あそこから力み始め、甲子園の時のように肘が下った。左足もインステップしているように見えた」。力み-。聖地で11四死球と荒れた最大の要因だった。フォームが崩れれば、リリースも乱れる。痛打された失投はフォークの抜け球だった。

 「変化球が抜けて、直球は引っ掛かった」と大谷。2-2の6回には3連続四死球で満塁にピンチを招いた。7番千田貴大(3年)を3ボール2ストライクから仕留めにいった直球が暴投となり、勝ち越し点を献上。後続を断ったところで外野に回った。

 6回1安打7四死球3失点。納得いく内容ではなかったが「フォークがこれからの課題」と、冬に覚えた新球をテーマにした初登板。スライダーを数球にしたのも、投球の幅を広げるためだ。目の前の結果に一喜一憂することなく、最後の夏に向けてさらなる進化を遂げる。【今井恵太】