<高校野球春季神奈川大会:桐光学園9-1横浜隼人>◇28日◇準々決勝◇保土ケ谷・神奈川新聞スタジアム

 昨夏の甲子園で大会記録となる1試合22奪三振をマークした桐光学園・松井裕樹投手(3年)が「幻惑」投法で、関東大会(栃木=5月18日~)出場へ王手をかけた。28日、昨春の県王者・横浜隼人との準々決勝で7回コールド勝ち。7回6安打1失点ながら12三振を奪った。直球主体だった横浜戦(21日)から一転、変化球で三振を量産。春の公式戦26イニング目で初失点したが、自己最速タイの147キロをマークするなど、視察したプロ6球団の前で好投した。

 明らかに直球主体だった横浜戦(21日)とは違っていた。松井は1回からモデルチェンジを予感させる投球を見せた。1死二塁と走者を背負い、カウント2ボール2ストライクから3番木下に投じた5球目。大きくドロップするカーブは打者の前でブレーキをかけ、止まるようにストーンと落ちた。左打者の外に逃げる変化で空振り三振。あまりの変化の大きさに約1万人の観衆がざわめいた。

 先週の横浜戦では13奪三振。そのうち10個が直球で奪った。しかし、この日は違った。12三振のうち、直球で決めたのはわずか3。残り9つはチェンジアップとカーブ、そしてスライダーで奪った。変化のきっかけは野呂雅之監督(51)の「来週は変化球を多く考えてみてくれ」という一言。スライダー解禁も直球主体だった横浜戦から、さらに投球の幅を広げる指示だった。

 横浜隼人打線の直球狙いは明らかだった。許した6安打のうち、5本が直球。左腕は「直球を見切られた時に変化球を使って、テンポを良くしたかった」と、打ち気になった打線をかわすために変化球を多投。効果的に使ったのがチェンジアップだ。昨夏の甲子園で3球しか投げなかった球に磨きをかけた。カウントも稼ぐことができ、直球と同じ腕の振りのため空振りも奪える。「チェンジアップの質は変わっていないが、直球が良くなった分、緩急がついた」とタイミングを外し、三振を量産した。また「宝刀」スライダーも、バージョンアップ。「外からのスライダーで見逃し三振を取れたので良かった」と制球力への手応えを口にした。

 春の公式戦26イニング目で初失点を喫したが「緊迫した場面でなくここで取られて良かった。変化球はまだ投げ込みしていないのでキレがまだまだ」と変化球を磨くことを誓った。この日は自己最速タイの147キロをマーク。投げるたびに、違った姿を見せていく。【島根純】