<秋季高校野球福島大会:いわき光洋10-3白河旭>◇17日◇1回戦◇天狗山球場

 福島で、いわき光洋が白河旭に8回コールド勝ちした。4番の畠山侑也内野手(2年)が初回に大会1号となる2ランを放ち、チームを勢いづけた。福島第1原発から半径20キロ圏内にある富岡町からいわきに家族で避難してきた畠山は、支えてくれた両親に公式戦初ホームランボールをささげた。

 チームと自分を勢いづける1発だった。初回、いわき光洋は相手のミスから1点を奪い、なお1死三塁のチャンス。打席は4番畠山。2ストライク1ボールから、5球目の直球を捉え、気持ちよく左翼へ運んだ。「入るかな、とは思いました。公式戦は初めてです」と、大会1号と自身の公式戦1号の“メモリアル弾”を喜んだ。

 初回の3点を契機に3、5、8回と点を積み重ねコールド勝ちした。地区大会では4戦でわずか2安打と不振だった畠山だが、この日は4打数2安打2打点の活躍だ。夏は5番で先発。郷家邦博監督(49)から「長打力があって勝負強い」と信頼を置かれる新4番が、勝利を呼び寄せた。

 スランプ脱出のきっかけは新潟県柏崎市に単身赴任する父昌克さん(38)からのメッセージだった。試合3日前に、携帯通信アプリ「LINE」を通じ、「水平になって打て」とアドバイスを受けた。「自分は前につっこんで左肩が下がってしまう。左肩を上げるくらいでちょうどいい」。腰をどっしりと構え、姿勢を水平に保ってバットを振った結果がホームランになった。

 出身は福島第1原発に近い富岡町。震災後、家族でいわき市に避難した。富岡二中時に所属した硬式チーム「相双中央リトルシニア」は休部になり、仲間はバラバラに。いわきでも当時硬式チームはなく、週末に郡山に通い「郡山シニア」で野球を続けた。畠山は「帰りたい気持ちを抑えて、いわきで頑張るしかない。支えてくれる人たちに野球で恩返ししたい」。この日のホームランボールは試合後、応援に駆けつけた両親に手渡した。

 帽子の裏には「上を目指せ」の文字。「チャンスで1本打って流れを変えるバッターになる」。今日18日の2回戦の相手は聖光学院。目標の東北大会に出場するため、自らのバットで強敵を倒す。【高場泉穂】

 ◆畠山侑也(はたけやま・ゆうや)1996年(平8)7月31日生まれ。福島県富岡町生まれ。富岡二小1年の時、「富岡コンバットジュニア」で野球を始める。富岡二中では「相双中央シニア」に所属。中3から平二中に転校し、「郡山シニア」に所属。いわき光洋では1年の秋からベンチ入り。家族は両親、弟。173センチ、78キロ。右投げ右打ち。高校通算本塁打3本。