<高校野球:MRT招待・済美7-0妻>◇10日◇サンマリンスタジアム宮崎

 今秋ドラフトの目玉、最速157キロ右腕の済美(愛媛)安楽智大投手(3年)が、右肘痛からの復活へ、7回10奪三振で着実な1歩を踏み出した。九州での試合にもかかわらず、スカウトは異例の9球団29人が集結。安楽は107球を投げ、最速143キロで、4安打無失点に抑えた。チームも妻(宮崎)に勝利した。

 昨年9月の愛媛大会1回戦で敗れた際、疲労が蓄積した右肘の違和感を訴えた。実戦復帰は、4月5日。今は「7~8割の力」と、回復過程にある。その中で、3回1死三塁から連続三振に切るなど、得点圏に走者を背負った場面では、6つのアウトをすべて三振で奪った。「今は160キロを出すことより、試合をつくることが一番」と言う。

 試合の流れを読みながら、力を配分し、連投にも備えるのが今のスタイル。上甲正典監督(66)は「今度痛めたら夏がダメになる。慎重にやっています。5月の終わりには145キロぐらいにしたい」と青写真を描く。安楽はヒジを痛めていた冬場は、走り込み、ウエートトレーニングなど基礎練習を徹底。体重は1キロ増の88キロだが、体脂肪率は約1%減の10%台で、より筋肉質にビルドアップした。

 試合後は、三塁側ブルペンで昨年9月のU18ワールド杯でチームメートだった、前橋育英(群馬)高橋光成投手(3年)と約8カ月ぶりに再会した。「友達でもあるし、ライバル。『甲子園の決勝で投げ合おう』って言って別れました」。大志を胸に抱きながら、7月12日に開幕する夏に向けて、着実に1歩ずつ進んでいく。【前田祐輔】