<高校野球埼玉大会:県川口4-1浦和学院>◇15日◇3回戦◇大宮公園

 昨春センバツ優勝投手の浦和学院(埼玉)小島和哉投手(3年)が、3回戦で姿を消した。左腕の小島に対し、左打者6人を並べるなど研究を重ねてきた県川口打線に対し、5回を5四死球と乱れ、5安打4失点でKOされた。

 こらえきれなかった。試合終了後のあいさつから一塁側ベンチに戻る時、小島の目から我慢していた涙があふれてきた。タオルで顔をぬぐいながら短い夏の終戦を実感した。「悔しいです。良いときの自分を取り戻せなかった。申し訳ない」と声を振り絞った。浦和学院が3回戦までに姿を消すのは、97年以来17年ぶりのことだった。

 いきなりピンチを迎え、耐えられなかった。1回表、先頭打者への初球を右腰周辺に当ててしまった。これで自身もチームも動揺。その後2死満塁となり、三塁への打球は記録上安打となったが、清野友貴三塁手(3年)の一塁送球が遅れ、2点先制を許した。清野は「自分の弱さが大事な場面で出て悔しいです」と涙を流した。

 すべては昨夏にさかのぼる。春夏連覇に挑んだ昨夏甲子園1回戦。仙台育英(宮城)に10-11で敗れた。小島は9回2死まで投げたが、9安打11失点の大乱調。制球力が生命線の投手が9四死球では勝てるはずがなかった。浦和学院の関係者が言う。「あの夏の呪縛から解き放たれていなかった。トラウマになっていたのかもしれないですね」。

 小島は昨秋、新チームがスタートした時、森士(おさむ)監督(50)から「このチームはお前のチームだぞ」と託された。「2年生の時の甲子園は先輩に連れてきてもらった。今度は自分が引っ張っていかなければいけない」と本人もそのつもりだった。だがこの日「自信を持ってやってきたけど、悩みに悩んだ1年でした」と初めて心の中を打ち明けた。

 今後、小島は大学進学の予定だ。将来の夢を問われた時は「プロ野球選手」と答えているが、それは先のことになりそう。学業成績はほとんど5で、人一倍努力家の左腕が次に目指すのは神宮のマウンドになりそうだ。【浅見晶久】