春夏7度の甲子園優勝を誇るPL学園(大阪)の硬式野球部が、来春入学する新入生の部員募集を取りやめることが11日、分かった。昨春から実質的な監督不在の状況が続くことが影響し、今週行われた学校の理事会で決まった。再来年以降の募集は未定で、高校球界を代表する名門野球部が存続の危機に直面した。

 高校球史に名を刻むPL学園が迷走する。来春の部員募集停止を決めた理由について学校側は、「野球経験のある指導者の不在が続き、責任を持って預かることができないため」と説明した。昨年3月に発覚した部内暴力の責任を取り、当時の監督が辞任。野球経験のない正井一真校長(67)が昨秋の近畿大会府予選から部長でベンチ入りし、近畿大会から監督を務めてきた。

 新監督が決まらない要因の1つに、学校側が候補とした指導者をPL教団が認めないことが挙げられる。昨年、前監督が退任した同時期に、短期間でプロ野球経験者が学生野球資格を回復できる新研修制度が始まった。学校側はOBを軸に複数の候補者を上申したが、教団が掲げた「教団への信仰心」という条件がネックとなり頓挫した。

 さらに、教団の信者数が減少し、特に金銭面で野球部を支える組織作りができなかった。全盛期のような「後方支援」を期待できず、就任に難色を示す者は多かった。部員募集を再開できる見通しについて、学校側は「廃部につながるものではなく、新監督が決まれば検討することになる」としている。ただ肝心の新監督は、人間教育と野球の両面で部員指導を託せる人材を探しており、メドは立ってはいない。

 現在2年21人、1年13人の部員は、教員、OBによる3人のコーチの指導のもと、来春のセンバツ出場を目指している。昨秋から公式戦では野球の知識に習熟した部員がサインを出す異例の形ながら、府大会で4季連続の4強以上。今秋も履正社などの強豪に勝利して準優勝し、18日開幕の近畿大会(京都・わかさ)の出場権を勝ち取った。センバツが決まれば、そのまま正井校長が指揮を執る予定だ。他校も驚く進撃を見せてきた名門野球部が、大きな転機を迎えている。

 ◆甲子園優勝校の存続

 春夏を通じ、甲子園優勝経験校が廃部になった例はない。夏の第1回大会を制した京都二中は学制改革で本校が廃校になったが、同校の流れを鳥羽が継承したとされ、鳥羽の出場回数に京都二中時代が入っている。

 ◆PL学園野球部

 1956年(昭31)創部。62年センバツで初甲子園。「逆転のPL」といわれた78年夏に甲子園初制覇。桑田、清原の「KKコンビ」を擁した83、85年夏にも日本一、87年には史上4校目の春夏連覇。