<センバツ高校野球:東洋大姫路1-0八頭>◇29日◇3回戦

 東洋大姫路(兵庫)がエース佐藤翔太(3年)の1-0完封で、同校5年ぶりの8強進出を決めた。佐藤は八頭(鳥取)をわずか2安打、10三振を奪う快投で8回に奪った1点を守り抜いた。東洋大姫路は春夏通算30勝で、兵庫県勢は春通算156勝で愛知県と並んで2位に浮上した。

 最少点の援護で十分だった。8回、味方打線が1点を先制したその裏。「尻上がりに調子が上がる」(佐藤)という投球は、この日の最高潮に達した。1死からスライダーで3球三振、続いてチェンジアップで連続空振り三振。左腕を大きく突き上げた。最終回も、10個目の三振を含む3者凡退。三塁を踏ませない安定感で、自身初の1-0完封を達成した。

 「10三振は、ていねいにコースを狙っていった結果です。平木投手も頑張っていたけれど、自分はTOYOの背番号1。負けるわけにはいかなかった」

 この気持ちの強さこそ、最大の持ち味だ。中日中田スカウト部長は「どんなときでも打者に対して向かっていくアグレッシブな姿勢が最大の魅力」と評価する。佐藤自身、目標の投手の存在は「特にいません」と言い続けていたが、中日川上にあこがれている。昨年の北京五輪アジア予選の投球を見て「内角攻めに本当にしびれました」と、夢中になった。

 繊やかさも併せ持つ。2人の兄の影響で2歳から野球に興味を持った。初めてグラブを買ってもらった3歳の誕生日から間もないころ。テレビで甲子園大会を見ていたとき、姫路工の投手が5回途中にグラブを替えた。一緒にいた大人のだれ1人として気付かなかった事象に「何で?」と気がついた。今でもチームメート全員の打撃フォームをまねできる。マウンドでは強気で大胆、普段は繊細な観察力がエース佐藤を支える。

 春8強はグエン・トラン・フォク・アン(東芝)がエースだった03年以来。そのときは4強入りした。「前回はアンさん?

 それ以上行かないと」。準々決勝は強打の智弁和歌山か、153キロ右腕・平生拓也(3年)を擁する宇治山田商(三重)か。強敵が佐藤を待っている。【堀まどか】