<センバツ高校野球:日大三10-0敦賀気比>◇3月31日◇準々決勝

 日大三(東京)が「エース&4番」の活躍で大勝し、38年ぶりの4強進出を決めた。先発の山崎福也(さちや)投手(3年)が3試合連続完投となる公式戦初完封。「プチおかわり君」こと4番横尾俊健三塁手(2年)は先制打を含む3安打3打点で、13安打10得点の打線を引っ張った。

 淡々とした幕切れが、強さを象徴するようだった。38年ぶりの4強を決めた山崎は、表情を変えることなく整列に向かった。2回までに3四球と制球に苦しんだが、徐々にペースアップ。3安打、108球で初完封した。「(疲労は)なくはないけど、ここまで来たら気持ち」と頼もしい。昨秋から投手に転向。1回戦で初完投すると、3試合すべて1人で投げ抜いた。

 エースが抑えて4番が打つ。投打のヒーローが上がったお立ち台で、打の主役、4番横尾は先輩山崎を「格好いいです」と言って、ほおを赤らめた。山崎は打っても3安打3打点と活躍。「本当は4番を打ちたい」と笑いながら、横尾には「見ているだけで和む」と愛情を注ぐ。

 公称176センチ、86キロでぽっちゃり体形の横尾は入学時88キロだった。「監督からおかわり君になれって言われてます」と同じ三塁手の西武中村を目標にする。毎日どんぶり3杯おかわり。1回2死二塁から先制左前適時を放つと、6回には右中間を破る2点適時三塁打。「疲れました…」と三塁に到達してぐったりした。

 1度に6カ所でフリー打撃ができる同校グラウンドで強打を磨く。携帯電話は禁止。山崎は元巨人捕手の父章弘さんらと話すこともできない分、野球に集中する。甲子園の三塁側後方に道を挟んで隣接する「ホテル夕立荘」に宿泊。夜は徒歩1分の聖地を眺めて、バットを振り込んできた。

 71年以来の優勝まであと2勝。この日は山崎があこがれの投手に挙げる巨人内海の母校との対戦だったが「そうなんですか?」と、重圧なんて感じさせない天然ぶりだった。【前田祐輔】