<高校野球宮城大会>◇30日◇決勝

 エースの下で、ナインが一丸となった。仙台育英は1-4で東北に敗れ、4年連続の夏の甲子園出場はならなかった。それでも、大会中に故障したエース穂積優輝(3年)が痛みをおしてフルスイング。親友の井筒大貴左翼手(3年)も3安打と気を吐いた。目標の聖地には行けなかったが、最強の団結力を見せつけた。

 ベンチには、いられなかった。9回、穂積は三塁コーチに名乗り出て、サポーターをつけた右足をグラウンドに踏み入れた。簡単に2死となると、祈るように天を見上げる。井筒が敵失で出塁。穂積は涙をふき、手をたたいて仲間を鼓舞した。しかし、後続が倒れてゲームセット。穂積はその場にうずくまった。

 24日の石巻工戦で右足首靱帯(じんたい)を損傷。大会中の登板は絶望的となったが、穂積は最後まで戦力だった。8回に代打で登場。空振り三振に倒れたが「2年半分の思いを込めました」と全力でバットを振り抜いた。佐々木順一朗監督(49)も「思い出づくりじゃない。勝つために代打で送った」と説明した。

 ナインも「穂積を甲子園に連れて行く」を合言葉に奮起した。全打席で出塁した井筒は、互いのイニシャルを刺しゅうしたTシャツを作るなど穂積と仲良し。応援団には、準々決勝から自分の打席の時に穂積コールを頼んだ。そんな仲間に、穂積は「心の底から感謝したい」と言った。

 大会期間中にエースが離脱という逆境を乗り越えての健闘。佐々木監督も「最低のチームから最高のチームになった。よくやった」とたたえた。【由本裕貴】