<全国高校野球選手権:立正大淞南1-0華陵>◇15日◇2回戦
相手の校歌を聴いてもまだ、現実と思えない。華陵のエース安達央貴投手(3年)に涙はなかった。「まだ何が起きたか実感してないです。周りの人を見て申し訳ないことをしたなって…」。サヨナラ本塁打を打たれたのは初めてだった。
0-0のまま迎えた最終回。107球目の直球が高めに浮いた。「しまった。やばい」と思った瞬間、打球は左翼席へ。「直前の守備でファインプレーをした左翼手だったんで、気をつけなければと思っていたんですけど…。今日一番の失投でした」。力んで5四死球を出し、7回以外は毎回走者を背負いながら、集中力を切らさず、8回までは無失点。そんな好投は報われなかった。「僕が直球を要求したから。スライダーを投げさせれば打たれなかった」と森川宇久捕手(3年)はエースをかばった。
7月下旬に豪雨に見舞われた山口に元気をあげたかった。一番被害が大きかった防府市に実家がある末富克弥外野手(3年)は甲子園に来る前、父に連れられて被災地を回った。中学時代の友達の家も被災した。出発前、その友達から「甲子園頑張って」とメールをもらい「苦しんでいる人が応援してくれるんだ」と逆に勇気づけられた。
エースの熱投とナインの奮起は、地元の人に届いたはずだ。「甲子園では自分たちの野球を出すことができました。胸を張って帰りたい」。主将の森川が全員の気持ちを代弁した。【前田泰子】


