上原がメジャー最激戦区に飛び込む。ボルティモア・サン紙は「オリオールズは大きく空いたローテーションの一つを埋めたと同時に、極東への扉を開いた」と華々しく報じた。マクファイル球団社長もAP通信に「あとは健康診断をパスすれば」と獲得を認めた。

 名門オ軍も厚遇で初の日本人選手を迎える。景気後退の影響で長期契約は望めなかったが、年平均500万ドル(約4億5000万円)の年俸は、昨季オ軍投手陣では2位に相当する。厚みを持たせたのは出来高で、先発起用を前提に先発数、投球回などを満額クリアすれば年平均300万ドル。仮にチーム事情でブルペン起用になっても、試合の最後に投げたリリーフ投手につく完了数に応じた「守護神」手当が付くという。

 オ軍は上原に先発ローテーションの中心として期待している。代理人ピーパー氏は同紙の取材に「先発の保証だけでなく、NO・2の評価ももらったから」と明かした。エース格は昨年10勝のガスリーだが、一方で12敗を喫するなどまだ実績に乏しい。豊富な国際経験と巨人時代の実績は、新エースに等しいと評価し、いち早くアプローチをかけていた。

 強豪ぞろいのア東地区に所属するオ軍は昨季、3地区制では初の最下位に沈んだ。敗因はリーグワースト2位の防御率5・13という投手力。優勝争いという点では今季も苦戦は免れない。15本塁打、65打点のヘルナンデスをレッズに放出したことで正捕手が不在。ゴールドグラブ賞13回のI・ロドリゲス(ヤンキースFA)を獲得候補に挙げている。投手では昨季12勝のルーパー(カージナルスFA)、10勝のレディング(ナショナルズFA)もリストアップするなど、補強策に積極的だ。低迷したからこそ、日本で112勝を挙げた右腕への期待は大きい。同紙は「もっとも印象的なのは奪三振に比べて四球が少ないこと」と最大の武器である制球力を絶賛した。

 同地区には日本人メジャーも多く、ヤンキース松井秀、レイズ岩村との直接対決だけで36試合。レッドソックス松坂との先発対決もある。しかも開幕カード(4月6~9日)はホームのヤ軍戦。順当なら同カードでの初登板が濃厚で、松井も立ちはだかる最高のデビュー戦になる。

 都内で練習を続けている上原は「今は細かい部分での詰めの作業をしているところなので、これ以上のコメントはできません」と話すにとどめた。大筋では合意しつつも、個人トレーナーの契約など諸条件の調整を進めているとみられる。背番号「19」も空き番。来週中にも健康診断などのため渡米、クリアすればそのまま入団発表が行われることになりそうだ。