9回2死から世紀の誤審で完全試合を逃したタイガースのアルマンド・ガララーガ投手(28)が3日、判定ミスを認めたジム・ジョイス審判員(54)と「和解」した。幻の大記録から一夜明けたこの日、インディアンス戦のメンバー交換に登場し、涙の同審判と握手を交わした。同投手には約480万円の高級車がプレゼントされ、ミシガン州知事が「完全試合に認定すべき」と声明を発表するなど、騒動の余波は政財界まで飛び火。また大リーグのバド・セリグ・コミッショナー(75)は誤審を覆すことはないとしたが今後、ビデオ判定の適用拡大を検討すると明らかにした。

 完全試合を消されたわだかまりを、ベテラン審判の涙で水に流した。本来は監督同士が行う試合前のメンバー交換に、タイガースは悲劇のヒーローとなったガララーガを送り出した。その姿を目にしたジョイス審判は同投手を直視できず、握手してメンバー表を受け取ると、あふれる涙を手でぬぐった。同投手も「あまり言葉は交わさなかった。彼はずっと泣いていたからね」と、やさしく背中に手を添えた。感動的な2人のやりとりがバックスクリーンに流れ、本拠地のファンから目の敵にされた同審判へのブーイングは、一気に収束した。

 一夜にして非難の集中砲火を浴びた同審判は、試合開始の2時間前から涙目。会見で改めて誤審を謝罪し「この責任はすべて私にある。ただ家族は巻き込まないで」と訴えた。一睡もできなかった心の傷は癒えておらず、この日は審判を外れるように進言されたが、気丈にも球審でフィールドに向かった。予期せぬ和解の場に、涙がどっとあふれ出た。「今日ほどタイガースのファンを誇りに思ったことはない」というタ軍リーランド監督の粋な演出に救われた。

 一方、ガララーガは笑顔。本拠地デトロイトに本社を置くゼネラル・モーターズ(GM)から活躍をたたえられ、シボレー・コルベットのオープンカーを贈呈された。市場価格5万3580ドル(約480万円)という高級車。年俸約4000万円の同投手にとってはビッグなプレゼントに、「クレージーだ。『これはあなたのものだ』と言われて、声が出なかったよ」と、前夜の悔しさも吹き飛ぶ喜びようだった。

 ただ周囲の落胆はまだ収まりそうにない。タ軍は大リーグ機構に誤審の異議申し立てをしないと決めたが、地元ミシガン州のグランホルム知事が「審判が誤審を謝罪したのだから、完全試合を認定すべきだ」とする公式声明を発表。ホワイトハウスも関心を寄せ、ギブス報道官が定例会見で「(完全試合に認めてもらうため)私たちの方で働きかけてみようか?」とジョーク交じりに話した。米メディアも誤審騒動を取り上げ、ニューヨーク・デーリー・ニューズ紙は1面で「史上最悪の判定」と報じ、ニューヨーク・ポストは「“完全”犯罪」の見出しで伝えた。