マー君世代の新星が現れた!? 楽天のドラフト5位入野貴大投手(26=四国IL・徳島)が開幕ローテーション入りに向け、快投を演じた。ソフトバンク戦に先発し、3回を無安打無失点の3奪三振。昨季王者を完璧に封じ込んだ。独立リーグに7年間在籍した88年生まれの遅咲きルーキーが、苦しい先発事情を救う救世主になるかもしれない。

 待ちに待った対決に入野の心が躍った。2回、先頭で打席に迎えたのは同い年の柳田。「力を入れていこうと思った」と意識的にギアを上げた。武器の直球とフォークを駆使して2球で追い込む。最後はこの日最速タイの外寄り低めの147キロで見逃し三振。「やってやったぞ、という気持ちでした。本音は空振り三振が良かったですけど」と、マウンドでは表情は変えず、手応えをかみしめた。

 負けん気の表れだった。88年生まれのいわゆる“マー君世代”。同学年選手への対抗意識は強い。昨年の入団会見で、対戦したい打者として真っ先に名前を挙げたのが柳田だった。「あのフルスイングがすごい。真っ向勝負がしたい」。今や侍ジャパンの主軸を張る男と、片や26歳のルーキー。独立リーグで磨いてきた自分の力を知る意味でも、アピールする意味でも最高の相手を仕留めた。

 柳田だけではない。強力打線相手の計9アウトのうち6つを直球で奪った。逆球もあったが「打たれるなら打たれろ、という気持ちだった。(球が)散らばってくれたところで凡打してくれたと思う」。結果よりも、腕を振り切ることに集中したことが、球に力強さを与えた。

 独立リーグで積み上げた7年間。プロへの道の厳しさを知るからこそ、「与えられたチャンスを無駄にしたくない。自分の仕事をすることだけ考えた」と言う。同世代とキャリアの差はついたが焦りはない。「僕は遅くなったけど、その差を埋められたら。やりがいありますよ」と力強く言い切った。

 先発陣の台所事情は苦しい。大久保監督は「強い真っすぐと強い気持ち。すごいのが出てきた。(先発ローテの)6番目より上に来るんじゃないか、という投球をみせてくれた」と喜んだ。それでも入野は言う。「目指していたプロ野球というステージで投げられてうれしいですが、もっとレベルアップして大きな舞台で投げたい」。アルバイトや実家のミカン畑を手伝いながら、はい上がってきた苦労人。貪欲なハングリー精神でプロの階段を駆け上がる。【佐竹実】