主役が帰ってきた。右ふくらはぎ痛が回復した巨人阿部慎之助内野手(35)が、西武とのオープン戦に「6番一塁」でスタメン出場。6回に中前打を放ち、復調をアピールした。岸の直球に対して素直にバットを出すミートの技術を披露。打撃フォームを固めて戦線に戻ってきた。27日の開幕戦まで実戦は残り6試合。キッチリ仕上げてきそうだ。

 やや上段に構えた。左足の付け根にたっぷり体重を乗せた。構えを動かさず、素直にバットを出した。阿部がシンプル極まりない打撃フォームで戦線に戻ってきた。西武の先発は岸。「久しぶりで、いいピッチャー。少しビックリした」のは第1打席だけだった。「全部打ちにいって、変化球を拾うつもりだった」。第2打席、初球。135キロの外角直球だった。「うまく対応できた」。結果は左飛だったが、角度がついて左翼フェンス手前まで運んだ。

 復活を期し、試行錯誤し、無駄を全部そいで、原点回帰した。「試合に関しては、フォームを気にしないでいきたい」。戦線離脱をけがの功名とし、土台は固まった。6回の第3打席。また外角、133キロの直球だった。踏み込んだ右足でビシッとくさびを打ち、頭が突っ込まなかった。打撃教則に採用されそうなセンター返し。ライナーで中前に運んだ。あれこれ悩む時間はもう終わった。

 残る課題はハッキリしている。一振りで相手の戦意を喪失させる、あのえげつない打球を取り戻したい。本人も分かっている。「甘い球は(1打席で)1球しかない。仕留めるために、いかに集中できるか」と言った。「集中」はメンタル面だけじゃない。インパクトの瞬間、いかにパワーを「集中」できるか。卓越したミート力の土台に、迫力を上書きしていく6試合になる。

 ふくらはぎの質問は「もう聞かないで」と愚問とした。「結果を出していきたい。状態を上げて開幕を迎えたい」と言った。ヒットは容易に打てる。出したい結果は「ザ・慎之助」の長打だ。原監督には「やるべきことをやっていく、というところ」と映った復帰戦の姿。不退転で挑む一塁転向。決意の1発が出れば準備は整う。【宮下敬至】

<巨人阿部ケガとキャンプからの動き>

 ▼2月18日 第3クール中に右ふくらはぎに張りを訴え、第4クール初日のこの日から別メニューで調整。

 ▼同26日 屋外での練習を再開し、ロングダッシュなどを行う。原監督は「(万全の)阿部慎之助で帰ってこい、と伝えた」。

 ▼3月6日 教育リーグ・DeNA戦に「3番一塁」で2月15日の紅白戦以来となる実戦復帰。遊飛、四球と無安打も「普通に動けた」と手応え。

 ▼同11日 教育リーグ・日本ハム戦で2打数1安打。守備、走塁でも全快をアピールし「準備はできた」と1軍合流へ意欲。原監督も「今打線がちょっとひどい。水鉄砲みたいだから」と主砲の復帰に期待。