涙…いや、汗の数だけ強くなれるよ-。巨人は16日、川崎市のジャイアンツ球場で4時間の猛練習を行った。非公開でのサインプレーを確認した後、暗くなるまで徹底的に打ち込みを行った。「労働は、汗を流すことが基本」と原辰徳監督(56)。開幕まで残り10日にして異例の特訓で、一気に状態を上げていく。

 前日から分かっていた。ロッテとのオープン戦を終えると、連絡事項を記すホワイトボードに「猛練習」としたためてあった。昼下がりのジャイアンツ球場に集まった選手たちは、原監督から「野球で大事なのは個の力。個の力を上げていかなくてはいけない」との言葉を受けた。非公開のサインプレー、シートノックまでで、まずは2時間。ここから打ち込みを2時間。ボールが見えにくくなる午後5時まで、みっちり鍛錬した。

 原監督は一塁側のベンチに腰掛け、目を光らせた。「労働は、汗を流すことが基本。『若いうちに流さなかった汗は、年を取ると涙に変わる』っていう言葉がある。だから、今、頑張れと言うことだな」と最後まで特訓を見届けた。

 現役時代は「オープン戦でホームラン3本、を目標にしていた」。助走期間の結果は「そんなに気にしすぎても。結果が良すぎても、逆に本番が不安になる面もあるから」と、深刻には考えていなかった。一方で、シーズンに入れば「野球こそ、究極の成果主義」と表現するシビアな現実が待っている。だからこそ「大事なのは内容。状態を上げること」と力んだ。

 特に攻撃面で、内容ある打席を積み重ねている選手が少ない。オープン戦14試合で1本塁打。8試合連続の1ケタ安打。チーム打率は2割1分5厘で、12球団中11位だ。14日に合流した阿部については「しっかり呼び込んで打てているかがポイント。いい状態」と心配はしていない。金看板の不在を守っていた面々が「個の力」を上げて開幕を迎え、一塁挑戦の阿部におんぶする格好を避けたい。

 陣容は整う。17日のイースタン・リーグ、ロッテ戦(ロッテ)で、手術明けの長野が実戦復帰。再調整中の村田も出場の予定だ。原監督は「試合に出ないと測れない部分がある。朗報になるといいですね」と期待した。3月に入り、チームが体を動かさなかった日は1日だけ。開幕オーダーうんぬん…、は第一義じゃない。シーズンが始まれば、「個の力」を上げる時間を確保することは難しい。晩秋にうれし涙を流すため、流せる汗を目いっぱい流す。【宮下敬至】

<原監督過去のコメント>

◆大きな試合に臨む際の心構えを問われ

 「もし『毒』を食らったとしても、毒を肥やしにするくらいの覚悟も必要だ」

◆優勝争いで力を発揮するための極意を問われ

 「今がチャンスだと思えるか。『あの時、実はチャンスだったんだな』と気づくようじゃ遅い。それは凡人だ」

◆負ければシーズン終了の剣が峰で選手を鼓舞し

 「我々は、徳俵に足がかかった。本当の力を見せよう。徳俵は言葉ほど簡単なモノではない。本当に最後の最後ではあるけど、あそこだけ『角』になっている。力を出せる場所だ。力を利用し怒とうのごとく押し返せることもある」

◆新たな戦術を採用する勇気について問われ

 「動けば相手は考える。それだけで有利に立てる。結果が裏に出たとする。チャレンジを嘆く必要は、まったくない。まして批判は…、論外だな」

◆キャンプ前、今季の施政方針を問われ

 「新しく、大願を成就する。『新成』のもと戦う。ここに、もうひとつ。『野性味』を加える。自立できるか、が野性の本質だ。広い意味がある」