西武森友哉捕手(19)が自身初の1試合2発と暴れる若獅子と化した。4回に楽天浜矢から右翼席へ今季1号ソロを放った。左腕からの1発はプロ入り後、初めて。8回には26歳上の大ベテラン斎藤から右中間へソロ弾をたたき込んだ。19歳の1試合2発は06年の西武炭谷以来9年ぶり。森の猛打賞4打点も含めプロ初ものずくめの活躍もあり、貧打で貯金1まで目減りしていた打線が覚醒して今季最多の14得点を挙げた。

 左腕の背中越しから甘めに入ったスライダーを、2年目の森は完璧に捉えた。4回。メヒアの3ランが起こした場内のどよめきが残る中、続いた。代名詞のフルスイングから放たれた打球は右翼席で弾んだ。昨季は代打中心で8打席目に放った1号は今季は開幕14戦、49打席目の難産の末に生まれた。「みんなが打って気持ちも楽だった。メヒアの本塁打で、どさくさにまぎれて振ったら出ました」と言葉の端々に19歳の若さがあふれた。

 進化を証明した。昨季は対左腕に苦しみ、右腕の打率3割6厘に対し、1割6分7厘しか打てずに本塁打もゼロだった。今季はキャンプ中から宮地打撃コーチに「試合に出続けるようになったら左右の成績は比較されるようになる。左も打てるようにならないと」と言われた。段階を経ながら左腕対策としてティー打撃では背中方向からの角度で上がってくる球に対して体を開かないように打ち続けた。この日はプロ入り後、左腕から初めて1発を放ち、11打数4安打の打率3割6分4厘。「あれはたまたまです。でも打てたのは1つの成長だなと思う」と、ほのかな自信も芽生えた。

 マルチ本塁打となる2本目は26歳上の大ベテラン斎藤から射止めた。高めに浮いた変化球を右中間へ運んだ。「ホームランを打つよりもヒット狙いでした」。地に足をつけて振った結果は最高峰のものだった。

 開幕スタメンを飾り、2戦目からは6戦連続安打と好スタートを切った。だがその後は16打席連続無安打も経験した。全体練習がオフの9、13日と休みを返上して汗を流した。3月上旬の2軍落ちで初心を取り戻した。道具に強いこだわりを示してこなかったが、グリップをタイカッブ型から長距離打者向けの細いものを試すなど試行錯誤した。

 「DHは打てる打者が使われるのに打てない時も使ってもらった。1本でも多く打ちたいと思っている。今後もそういう気持ちを忘れないようにしたい」。日々得る経験が将来への財産となっている。森は今年も大きく育っていく。【広重竜太郎】

 ▼19歳8カ月の森がプロ入り初の1試合2本塁打。10代選手の1試合2本塁打以上は、06年3月29日ソフトバンク戦で18歳8カ月の炭谷(西武)が記録して以来、9年ぶりになる。2本目は45歳2カ月の斎藤から。これまで投手と打者の最大年齢差の1発は、12年5月6日に20歳5カ月の筒香(DeNA)が46歳8カ月の山本昌(中日)から打った26歳3カ月差。次いで09年4月8日に20歳3カ月の坂本(巨人)が45歳11カ月の工藤(横浜)からの25歳8カ月差があり、森と斎藤隆の25歳6カ月差は3位の年齢差。10代の選手が打った相手としては最も高齢の投手になった。