日本ハム斎藤佑樹投手(27)がプロ入り後、初めて甲子園のマウンドに上がり2回1失点だった。「日本生命セ・パ交流戦」の阪神戦で、7回から5番手で登板。早大3年時の09年オール早慶戦以来の聖地で、3年ぶり2度目の中継ぎ登板だった。チームは3失策と乱れ、今季ワーストの1イニング7失点など2桁失点で同一カード3連敗。交流戦2位に終わった。

 待ちわびていた甲子園が、泣いているようだった。聖地を、小さな雨粒がぬらしていた。斎藤がプロ5年目で、初めて懐かしの甲子園のマウンドに立った。逆転が絶望的な9点ビハインドを追う、終盤の酷な状況。懸命に丹念に右腕を振った。7回から5番手で2回を2安打1失点。引き分け以上で、交流戦1位が決まる大一番で「V逸」が濃厚という展開だった。終わってみれば無情だった全力の20球に、価値を見た。

 斎藤 いろいろなことは感じましたけれど一番大事なのは、1軍で投げるということ。甲子園が、きっかけになればいい。

 開幕ローテーション入りして1軍2登板で2軍降格。中継ぎへと配置転換され、4月17日以来の表舞台にカムバックした。必死だった。

 真剣勝負では9年ぶりに甲子園へ帰ってきた。早大時代の09年11月にオール早慶戦で登板したが、プロ入り後は機会に恵まれなかった。本気で相手と向き合うのはヤンキース田中と伝説の投げ合いを演じた、06年夏の甲子園決勝、早実-駒大苫小牧の延長再試合以来だった。「あの時と雰囲気は変わっていないですね」。最初の打者・鶴岡への初球は、1軍登板ではプロ最速タイ147キロ。見えない力に後押しされたかのようにパワフルだった。

 チームは4回。先発の有原、2番手ガラテ、3番手白村の3人とも乱調。拍車をかけたのが「草野球」のような2失策。交流戦の1位と2位では賞金の差額が1000万円。一戦で大金をソフトバンクに譲り、獲得は500万円にとどまった。

 栗山監督は襟を正した。「甲子園に『まだお前らダメなんだ』と言われている。せめてもの救いはこの試合が、甲子園だったということ」。パ首位で19日から敵地でのソフトバンク3連戦が控える。再生の階段を上った斎藤。手綱を締め直すに格好のミス。天王山へ向かう、プライスレスの推進力も得た。【高山通史】