まずは若武者が首位切りの先陣を切った。中日若松駿太投手(20)が阪神打線6回無失点に抑え、2勝目を挙げた。代打を出された7回に待望の1点が入り、岩田との粘りあいを制した。好投が続きながら援護に恵まれなかった右腕の好投で首位と再び4・5ゲーム差。前半戦ラストスパートの勢いをつけた。

 背後に走者がいても、ボールカウントを示す緑のランプが増えても、動じない。ベテランのような老練さで若松は桂のミットめがけて投球を続けた。

 バッテリーの配球には一家言持つ谷繁兼任監督がうなる。「直球の制球がよく、スライダーもチェンジアップもいいところに投げられていた。自分で意識しながら投げているように見える。どう投げて、どう打者を抑えるかが少しずつ見えてきた」。20歳と23歳のコンビに贈った賛辞だ。最大のピンチは2回の無死二、三塁。ここで今成を三ゴロにしとめたが、三塁走者マートンが飛び出し堂上がタッチ。そのまま一塁送球でラッキーな併殺が完成した。直前に一ゴロのベースカバーで捕球ミスし、ピンチを広げていた若松は「自分のミスもあったけど、冷静になれました。緩急をうまく使えました」と落ち着いて対処した。

 代打を出された7回に待望の先制点が入り、勝ち投手の権利を持って降板した。今季7試合目の先発。中継ぎも含め9試合で防御率は2・01。なのに勝利は6月2日の西武戦以来という不運ぶり。白星がつかなくても、首脳陣は日に日に評価を高めていた。

 ドラフト指名時の担当だった故渡辺麿文(たかふみ)スカウト(享年57)にささげた1カ月前のプロ初白星。直後、福岡県に住む渡辺さんの夫人と連絡をとった。「“お父さん”はこれからも空から見守っているから、頑張って」と伝えられた。経験が浅いながらマウンドで我慢を続けられる理由はここにもある。

 「野手の皆さんに助けてもらいながら粘り強く投げられました。チーム状況も雰囲気も悪くない。ずっと勝っていって、優勝できるように貢献したい。まだ2勝目なのでどんどん勝っていきたい」。6連戦の初戦を任された20歳右腕が火をつけた。首位の虎を狩ってゲーム差4・5。そろそろ「蚊帳の外」の肩書も外したい。【柏原誠】

 ◆竜の新世代ローテ 阪神戦は若松に続き、今日は26歳大野、3戦目は24歳小熊を予定。広島戦は20歳鈴木、37歳山井を挟み22歳西川と変更された先発スタッフ6人の平均年齢24・8歳。