さすがのエースだ。広島前田健太投手(27)が7回7安打2失点の粘投で8勝目を挙げた。再三走者を背負いながらも要所で粘った。8日に亡くなった大野寮長・宮脇敏氏(享年63)にささげる弔い星だ。107球で降板し、中4日での15日阪神戦(甲子園)登板の可能性も残した。チームも連敗を止めて3位浮上だ。カープが勢いに乗っていく。

 拳を握り、前田は控えめにガッツポーズを作った。5回2死満塁のピンチを切り抜け、歩いて三塁ベンチへ向かう。一打逆転の場面で1点差を守り抜いた。ナニータを二ゴロに仕留めたのは、146キロの直球だった。6回以降も無失点で切り抜け、7回7安打2失点でマウンドを譲った。

 「全然調子がよくなかったので、粘り強くいこうと思ってました。味方が先に点を取ってくれたのが大きかったですね」

 1回に新井の適時二塁打で先制点をもらった。しかし2回に内野ゴロの間に同点に追いつかれた。シアーホルツの2ランで勝ち越した直後の3回には適時内野安打で1点差に迫られた。不運な安打も多く、走者を背負った。しかし2度は追いつかれないのがエース。直球を見せ球に、鋭く曲がるスライダーが生命線だった。そこに加えて、気持ちで圧倒した。

 「ファームにいるときは、よくほめてくれました。早く1軍で投げないといけないよ、と言って認めてくれました。優勝を目指してやっていきたい」

 8日に亡くなった大野寮長・宮脇敏氏にささげる1勝だった。2軍時代のマネジャー。昨オフにはシーズンで使用したグラブにサインを入れてプレゼントした。前日9日の通夜には花輪を届けた。ウイニングボールを届けることも考えるという。チームとしても、2戦目でようやく弔い星をささげられた。

 8回以降は初めて1点差を大瀬良、中崎の「チームマエケン」でつないだ。これで自身4連勝。107球で降板し、中4日で15日阪神戦(甲子園)で先発する可能性も残した。チームも連敗を止めて3位浮上。借金も2とした。「2失点で追いつかせないように投げてくれた」と緒方監督。マエケンの意地の粘投を、連勝につなげたい。【池本泰尚】