どや顔がさく裂した! 全セ広島新井貴浩内野手(38)が夢舞台で輝いた。第1打席はフルスイングで空振り三振。マツダスタジアムを沸かせると、第2打席ではきっちり中前打で出塁。第3打席では右中間に適時二塁打を放った。古巣復帰で誰よりも思い入れの強い今回の球宴。宣言通りのフルスイングだった。昨オフに阪神から野球協約の上限を超える減俸を提示され、自由契約を選択した男が敢闘賞獲得。後半戦へ向けてはずみをつけた。

 いつになく軽いジャンプの後、新井はバットを両手でぶん投げて走り始めた。膨らむ走路を駆け抜ける表情は、これぞまさしく新井のどや顔。カラフルに染まったスタンドは一瞬で、興奮のるつぼに。主人公は二塁で大歓声を浴びた。5回2死二塁。右中間へ運んだ適時二塁打だった。さらに続くDeNA梶谷の中前適時打で激走して生還。お祭り男の本領発揮だった。

 「いいスイングができたね。本塁打を見せることはできなかったけど、喜んでもらえたかなと思います」

 第1打席から劇場だった。「全打席本塁打」の宣言通り初球からフルスイング。144キロの高め直球に空振りすると、膝から崩れ落ちた。だが「あれはそういうふうにしようかなと思って(笑い)」と計算済み。空振り三振に倒れても、ホームグラウンドを揺らした。一転、第2打席では追い込まれてからコンパクトに中前打。「センター中心にね。変化球も結構多かったから」と笑っていた。

 これで球宴通算25打数13安打で打率5割2分。豪快さの裏の“緻密さ”がある。帰り際には安仁屋OB会長からも「空振りのアピールが効いたな」と言われ、豪快に笑った。「自分ではなぜかは分からない。でもファン投票で選んでもらって。何とか喜んでもらいたいと思ってやった結果かな」。2安打1打点で敢闘賞を獲得。「賞金は女房に渡すかな」とはにかんだ。

 大粒の汗をぬぐい終わると、その目はもう後半戦を見つめていた。5位ながら首位と2ゲーム差につける。新井は言う。「後半戦が始まって最初の1カ月はすごく大事。とにかく形とかではなく、なりふり構わず勝ちに行く。みんなで戦っていく」。38歳が全力プレーでチームを引っ張る。どや顔がさく裂したとき、広島はぐんぐん上昇していく。【池本泰尚】