主砲が目覚めの2発だ。日本ハム中田翔内野手(26)が、西武19回戦で、今季2度目の1試合2本塁打を放った。2回に左翼へ25号先制ソロ、6回にも左翼へダメ押しの26号3ラン。3打数2安打で自己最多タイの5打点を挙げた。9回には代打大谷の5号ソロで「平成のON」が今季3度目のアベック弾。不振をかこっていた4番の完全復活で、チームは西武戦の今季勝ち越しを決めた。

 懐かしい光景が、飛び込んできた。歓喜に沸き上がるチームメートが、中田を待っていた。2回の第1打席。眠っていたスラッガーの本能が、目覚めた。3球目。内角高めに飛び込んできた直球148キロ。「反応で打てた」。豪快なフルスイングが、本塁打を予感させた。左翼席に突き刺さる先制の25号ソロ。7月30日オリックス戦から12試合47打席、遠ざかっていた感触に自然と笑みがこぼれた。

 頼もしい姿が、戻ってきた。3回には「眼力」で押し出し四球を誘い、勝ち越しに成功。初対決の西武先発・郭俊麟を仕留めた。6回には2番手・宮田の初球を、再び左翼席へ運ぶ26号3ラン。4月15日ロッテ戦以来の1試合2発と圧倒した。9回には大谷の代打弾で「平成のON砲」が鳴り響いた。今季3度目の1試合5打点。両チーム計27安打19点の乱打戦を制する主役を、堂々張った。「自然と気持ちが入った。気持ち的にもだいぶ、楽になった」。つぶれそうになっていた使命感を、ぶつけた。

 仲間の存在が支えになり、力になり続けていた。青春時代をともにした旧友が西武岡田。大阪桐蔭の同級生で3年センバツでは、バッテリーを組みベスト8に進出した。顔を見合わせれば、ほおをたたいてじゃれ合うなど心許せる仲。普段は主軸としてめったに弱い姿を見せないが、岡田は素顔を見せられる数少ない存在でいる。

 試合があれば必ず食事の機会をつくるのが、いつしかルールになった。たわいのない話から始まり、最後はいつも真剣な野球の話になる。そこで決まって繰り返す、言葉があるという。

 中田 1試合1試合、大事にしたいんや。

 己を信じて進んできた野球人生で感じた、思いだった。プロ8年目。チームを引っ張る立場になって責任感は増した。岡田は目を細め、笑う。「アイツはふざけたことも言うけど、野球に対する考え方は変わった」。

 自覚十分の仕事で、節目の大勝につなげた。この日の勝利で、今季の西武戦の勝ち越しが決定。球宴明けの後半戦で初めて、2カード連続勝ち越しも決めた。「少しの、きっかけをつかむために必死。これで良くなれば」。順位争いが激しさを増す夏場。4番にしか果たせない勝負が、待っている。【田中彩友美】

 ▼日本ハム中田と大谷がアベック本塁打を放った。昨季は14年7月5日ロッテ戦、8月12日ロッテ戦、今季は4月22日西武戦、5月19日楽天戦に続き、通算5度目(4勝1敗)。大谷は今季の本塁打5本のうち3本が中田とのアベック本塁打だ。また、中田の1試合5打点は自己最多タイで通算9度目。