エースが粘り、4番が打って連敗を3で止めた。ロッテ先発の涌井秀章投手(29)が7回6安打2失点で今季10勝目を挙げた。西武で14勝した10年以来の2桁勝利。負ければ借金生活のマウンドを託した先発の柱が踏ん張れば、ロッテの主砲アルフレド・デスパイネ外野手(29)が1本塁打含む2安打3打点。昨年9月23日から続く本塁打なら負けなしの神話を16試合に伸ばした。

 淡々と腕を振り続けた涌井の表情が、ようやく緩んだ。逆転でオリックスを下し、連敗を3で止めた直後に、決勝打のデスパイネから「おめでとう」と祝福された瞬間だった。主砲の援護を受けての今季10勝目は実に5年ぶり、ロッテ移籍後初の2桁勝利となった。それでも喜びは一瞬だけ。「1年間を先発で回る投手としては、最低でも2桁は勝たないと。ただ、この10勝はチームに勝たせてもらった勝利が多い。次は自分の力で勝ちたい」と、すぐに感情をしまい込んだ。

 3回までに2点を先制されても、表情を変えずにテンポよく投げ込んだ。7回を89球。安打は許しても、四球も連打も与えなかった。「これまでは点を取られた直後にまた取られることが多かった」。失点直後の2回と4回はいずれも3者凡退で締めた。先頭の小田に二塁打を浴びた6回には右足がつりそうになったが、続く岩崎の犠打失敗とけん制死にも助けられ追加点を許さなかった。「あの場面が大きかった。足は7回からは大丈夫でしたよ」と涼しい顔で振り返った。

 伊東監督が「今は球数もイニングも投げられる。まだ余力があった」と称賛した7回2失点には下地がある。移籍2年目の今季は、自らの希望で登板間のランニング量を昨年から2、3割増やしていた。記録的な猛暑が続いた8月初旬も、QVCマリンには大粒の汗を流し続けるエースの姿があった。楠トレーニングコーチは「勝負どころの9月にへばらないように、ということです。今年は移籍2年目。好きなようにやっていいと言ってます」と説明。誰もが苦しい時期に力となりたい。大目標のCS進出へ向け、人知れず準備を積み重ねてきた。

 この10勝目はあくまで通過点とする。「理想は最後まで0点で抑えること。そしてチームが上がっていくこと」と言い切った。今季100試合目を制し、残りは43試合。上だけを見て腕を振る。【松本岳志】