日本ハム陽岱鋼外野手(28)が、ロッテ17回戦で今季最多タイの4打点を挙げ、4連勝に導いた。1点リードの4回2死満塁から、二塁後方に落ちるラッキーな3点適時打。6回には右越えの適時三塁打で突き放した。チームは今季7度目の同一カード3連勝。首位ソフトバンクが勝ち、自力優勝の復活はならなかったが、栗山監督就任の12年以降、貯金は最多18に伸ばした。

 反攻の旗手になる夏男が、痛快だ。ノリノリのロン毛のファッションスター、陽岱鋼が決めた。4回2死満塁、6回2死一塁。相手にダメージ抜群の2本の適時打を連ね、今季2度目の1試合4打点。5月2日ロッテ戦以来の荒稼ぎは、同じQVCマリンだ。海辺だけに、ハイテンションなのだ。因果関係は不明だが、スマイルがはじけた。「みんな打っている。一緒になって僕も勝負したい」。4連勝を、けん引。ソフトバンクの優勝マジックの一時消滅こそ逃したが、奇跡の追い上げへ向かう。

 勝負の夏。熱いハートが、プレーにもしみる。3日。福岡遠征の移動休日だった。チームの搭乗便より早く、先回りして思い出の地へ向かった。台湾から海を渡り、福岡第一時代の3年間を過ごした福岡市へ。「日本のお父さん」と慕っている人がいる。師事した当時の監督、平松正宏氏(55=日本経済大教授)の下へ向かった。

 今季でプロ10年目。久々に対面し深々と礼をした。

 「今年で10年目になりました。10年間、プロでやれてきたのも先生のおかげです。感謝しています」

 手にはラッピングした、大きなバッグ。思いを込めたプレゼントだった。平松氏は、感慨に浸った。

 「涙が出そうになったわ。一番、厳しくした選手やからね。『日本でプロになれるんやから』って。才能があったから」

 数時間、会食した。昔話に花を咲かせた。現在は収入で勝る陽岱鋼が費用をもとうとしたが、拒まれた。クギを刺された。「2億円プレーヤーになっても、いつまでも教え子。払ってもらうわけにいかん」。甘え、ごちそうになった。ドラフト指名時の契約金1億円は、20歳になるまで管理してもらっていた。「先生がいなかったら今、自分はここ(プロ)にいなかった」

 青春時代を思い出した夏。「見た目は、あれやけど、あいつは一流になっても心が変わらない。それが、うれしい。だから、頑張れているんやろうね」。恩師は一安心し、確信した。開幕直後の不振に故障と、障害を乗り越えた。原点に返る再会で、反骨精神に火が付いた。7戦連続安打で、8月は月間打率3割1分4厘。栗山監督には就任4年目で最多18の貯金を、贈った。

 「2カ月以上(故障で)休んだので、みんなが疲れてきた時に僕が…」。奇跡のビッグウエーブを捉える、風を吹かす。【高山通史】

 ▼日本ハム陽岱鋼が今季最多タイの4打点をマークした。前回も同じくQVCマリンでの5月2日ロッテ戦で、3安打4打点で14-2の大勝に貢献。陽岱鋼が打点を挙げた試合は8連勝となり、今季12勝1敗で勝率9割2分3厘を誇る。

 ▼日本ハムが4連勝で今季最多の貯金を18に伸ばした。前日19日の貯金17は、栗山監督就任以降では、1年目の12年9月29日と並び最多タイだったが、これで栗山政権下の最多を更新。北海道に本拠地を移転した04年以降、最多の貯金は06年9月19日、同27日の28が最多。球団史上最多は前身東映時代の61年の35。