ソフトバンク柳田悠岐外野手(26)が、自身初の30本塁打到達を衝撃度大のアーチで飾った。6回、詰まりながら左翼線ポール際にダメ押しソロ。トリプルスリー達成に大きく近づいた。猛打賞で首位打者にも返り咲き、打率3割超は確実。現実的に、残すは現在28の盗塁部門。柳田の活躍などでチームは直接対決で日本ハムを下し、マジック10。トリプルスリーも、リーグ連覇も、カウントダウン突入だ。

 北の大地で偉業に近づく豪快アーチだ。6点リードの6回。フルカウントから日本ハム須永の142キロ外角直球を逆らわずに捉えた。打球は、紅葉が始まった大雪山が遠方にそびえる旭川スタルヒン球場の左翼ポール際へ一直線。「ちょっと詰まったんですが、振り切ったんで飛んでくれましたね」。少し差し込まれたが、それも計算のうち。信条のフルスイングが、大台到達を現実のものにした。

 「嬉しいです。(29本の次も)出ればいいなと思っていたけど、出るまでは不安だった。あと2試合、まずは勝つことだけを考えてやっていきたいです」

 自己最多だった昨年の15本の2倍に届くと痛みの残る右腕でガッツポーズを繰り返し、秋風を受けダイヤモンドを回った。6日楽天戦で右肘に死球を受け、この日は指名打者で出場。藤井打撃コーチは「バッティングは問題ないが、守りでまだ少し痛みがある。無理はさせない」と明かしていた。しかも、この日、旭川は朝方に気温11度を記録。ブルペンには炭が、ベンチ裏にもストーブが用意されたが、柳田のスイングスピードが落ちることなどない。

 初めてレギュラーをつかんだ2年前には「年俸5000万円くらいもらえるくらいになればいい」と夢を語り、当時2軍監督だった小川一夫編成・育成部部長から「お前は自分のすごさを全然分かっていない。もっと上を狙わなきゃダメだ」と、たしなめられた。あれから2年。今や球界を代表する打者へと成長。3安打を放って首位打者にも返り咲き。打率は3割6分4厘と3割超えは確実で、トリプルスリーへ残すは現在28の盗塁部門だ。

 工藤監督も「目標の数字ということでおめでとうございます。あと2つ頑張るという感じ。何もしてやれないんでね。いいモチベーションになっているので、ケガしないように頑張ってほしい」と、エールを送った。チームもこの日の勝利でマジックが10に減った。柳田のトリプルスリー達成とともに、優勝も目の前まで近づいてきた。残り23試合。ともにカウントダウンに入った2つの目標達成へ、柳田は最後までフルスイングを貫く。【福岡吉央】

 ▼柳田が今季30号本塁打。打率は3割6分4厘、28盗塁で、山田(ヤクルト)とともに、過去8人しかいないトリプルスリーに近づいた。現在、柳田は打率が1位で盗塁が1位タイ。過去の達成者で3部門のタイトル獲得は50年別当(毎日)と53年中西(西鉄)の本塁打だけ。2部門同時、打率、盗塁でタイトル獲得なら初となる。盗塁は30に未到達だが、3割、30本達成で25~29盗塁は過去3人。3人のうち最多盗塁は50年青田(巨人)の29。

 ▼柳田の30本塁打到達は初めて。今季は同僚の松田も31本塁打だが、ソフトバンクで複数人が30発以上は05年松中(46本)ズレータ(43本)以来11度目。今季は李大浩も28本で、3人が30本以上となれば04年松中(44本)城島(36本)ズレータ(37本)以来。最多は01年の4人(小久保44、松中36、城島31、井口30本)。