クライマックスシリーズ(CS)へ向けて大きな勝利だ。日本ハムのブランドン・レアード内野手(28)が、ソフトバンク23回戦で、来日初のサヨナラ本塁打を放ち、劇的勝利を決めた。1点を追う9回無死一塁、相手の絶対的守護神サファテに今季初黒星をつける付加価値十分の逆転2ラン。今季6度目のサヨナラ勝利で、CSでの下克上に向け、布石を打った。

 打った瞬間の手応えと、沸き上がる歓声に身震いした。レアードは、感慨に浸った。「ファンの反応を見て鳥肌が立った」。1点を追う9回無死一塁。サファテの初球、129キロの変化球を豪快に捉えた。打球は左翼席へ美しいアーチを描き、32号サヨナラ2ラン。「心臓バクバクで、この瞬間をかみしめたいと思って、ベースを回っていたよ」。本塁付近には笑顔のチームメートが待っていた。中田や杉谷らから次々とペットボトルの水を浴びせられた。心地よい冷たさに「信じられないくらい興奮した」と、叫んだ。

 たった一振りで、ヒーローとなった。前3打席は、いずれも空振り三振。バットは空を切り続けたが「三振とか引きずらないタイプ。悪いことに気づいても、落ち込むだけだから消し去るんだ」。ポジティブ思考だけでなく、チームメートへの思いやりも幸運も呼ぶ。6月から故障離脱したハーミッダともメールなどで絶えず連絡を取り合ってきた。今季ともに新加入した野手同士。1軍復帰へ向けてリハビリ中の仲間を勇気づけ、励まし合ってきた。

 次なる目標へ向けても、価値ある1発となった。絶対的守護神のサファテに63試合目の登板で今季初黒星を付け、セーブ王争いを繰り広げる増井もアシスト。きっかけは近藤の粘りだ。「何とか塁に出てプレッシャーをかけようと思った」と、7球中6球が150キロ超えの直球を見極め、四球を選んだ。突破口を開いて、レアードが最後に仕留めた。「CSに近づいている時期で良かった。相手に嫌なイメージも付けられたしね」(レアード)。7月15日、帯広での対戦でも3安打で1得点。今回の強烈な印象も加えて、下克上を狙うCSでの戦いへ大きな布石を打った。

 栗山監督も殊勲の助っ人に目を細めた。「(イニング間の演出で)『すしカメラ』が出来ちゃうくらい、いい選手になったのがうれしい。(3三振で)全然当たる感じがしなかったけど、あれがレアードなのかもしれない」。本塁打の際に見せる「すし握り」の決めポーズとともに、チームは今季6度目のサヨナラ勝利。頼もしさが増してきた助っ人は言った。「ホークスはいいチームだけど、ファイターズも負けていない。いい流れでCSに行きたい」。10月に控えるリベンジの舞台へつながる、最高の放物線だった。【木下大輔】

 ▼日本ハムが今季6度目のサヨナラ勝ちを収めた。レアードのサヨナラ打は8月21日オリックス戦の延長10回無死満塁で中犠飛を放って以来、今季2度目。北海道移転後、サヨナラ本塁打はこの日で12度目となるが、これまでの11度はすべて同点の場面での本塁打。1点以上を追う場面での逆転サヨナラ本塁打は初めてとなる。