ソフトバンク先発のリック・バンデンハーク投手(30)が、8回無失点で公式戦無傷の11連勝を飾った。150キロ超の直球を主体にヤクルト打線を圧倒。三塁を踏ませず、バレンティンらから7三振を奪う完璧ピッチだ。これでリーグ戦、CSファイナルステージと合わせて11勝0敗。無敵の助っ人が連勝を呼び、日本シリーズの流れを大きく引き寄せた。

 投も圧倒した。完封こそならなかったが、バンデンハークがヤクルト打線を8回3安打に抑え、三塁を踏ませぬ快投。お立ち台では選手会長松田をまねて「1、2、3、熱男!」と声をかけ、スタンドを沸かせた。

 「この舞台で投げられることに興奮したし、楽しめた。日本シリーズでこういうチャンスはなかなかない。最後までいきたかったが、勝つことが一番だから」

 工藤監督がお立ち台で「9回まで投げさせてくれと言われたが、リリーフ陣が1人も投げていないので、勘弁してくれと言った。バンディごめんね」と、謝ったほどの好投だった。

 圧巻は2回だ。先頭畠山をスライダーで見逃し三振に仕留めると、雄平も116キロのカーブで空振り三振。ともにオランダ代表歴のあるバレンティンも118キロカーブで空振り三振。直球で押した初回とは違う組み立てで、テンポよくアウトを重ねた。昨年まで2年間在籍した韓国サムスンでも韓国シリーズに計5試合登板。韓国史上初の4連覇に貢献した男は、大舞台もお手のものだった。

 17歳で捕手としてマーリンズと契約。すぐに投手に転向した。今よりも体が細かったルーキーリーグ時代には、チームでただ1人、朝6時半からグラウンドに出向き、フロリダの強い日差しを浴びながら毎日走り込みを続けた。198センチの長身ながら、下半身を使ったフォームの土台は、そんな地道な努力があったから。当時、同じチームでバッテリーを組んでいた福岡大出身の石田雅弘さん(34)は「35人いた選手の中で一番練習していた。自分に厳しく、僕も『お前は何でもっと練習しないんだ?』と、怒られました」と振り返る。

 これでシーズンの9勝に加え、CS、日本シリーズと無傷の11連勝。今季7試合6勝、防御率1・88と抜群の安定感を誇っていたヤフオクドームで、この日も勝利の女神がほほ笑んだ。【福岡吉央】

 ◆リック・バンデンハーク 1985年5月22日、オランダ生まれ。17歳の時にマーリンズと契約。その後オリオールズ、パイレーツに移籍。大リーグ通算50試合で8勝11敗、防御率6・08。13年から韓国・サムスンに所属。14年には13勝4敗、防御率3・18、180奪三振で最優秀防御率と最多奪三振の2冠。来日1年目の今季は6月14日広島戦で1軍デビュー。09年WBCオランダ代表。家族は妻。198センチ、105キロ。右投げ右打ち。今季から2年契約で推定年俸1億5000万円。

 ▼バンデンハークがシリーズ初登板初勝利。来日1年目の同投手は公式戦9勝0敗、CS1勝0敗で、公式戦、CSともに初登板を白星で飾ってまだ無敗。来日1年目の外国人投手が公式戦とシリーズの両方で初登板初勝利は64年バーンサイド(阪神)85年ゲイル(阪神)95年ブロス(ヤクルト)10年ペン(ロッテ)に次ぎ5人目で、CSでも初登板初勝利は初。その年の公式戦で5勝以上の勝率10割投手がシリーズで登板は6人目だが、勝ったのは13年田中(楽天)に次いで2人目。田中は公式戦24勝0敗、CS1勝0敗で、シリーズは3試合に登板し○●S。田中は26連勝後に1敗したが、バンデンハークはこのまま無敗で終わるか。