世界戦前の試運転だ。侍ジャパンの広島前田健太投手(27)が28日、11月8日開幕の国際大会「プレミア12」に向け、新球チェンジアップを試投した。秋季練習で紅白戦に登板。最終3回に納得の2球を投じた。侍ジャパン合流前最後の実戦登板で3回2安打1失点は、数字以上に収穫のある登板となった。

 投じた白球は狙い通りに、直線に描いた軌道から落ちた。打者のバットは空を切る。納得の変化で空振り三振。前田はマウンド上でドヤ顔を見せた。

 「新球チェンジアップです。結果が気にならない実戦はあまりないので投げてみた。最後に空振りを取った球は良かった」

 実戦登板は今月7日の今季最終戦以来だった。中20日で侍ジャパン合流前の最終調整。立ち上がりから感覚を確かめるように投げ、徐々に球の勢いや切れが増した。納得の出来は、3回2死から投じた2球だ。2日前までフェニックス・リーグで実戦を積んできた鈴木誠がタイミングを崩され、最後はバットは空を切った。「球が来ない。これでシーズン中くらい真っすぐの切れがあると打てない」と目を丸くした。

 もともとチェンジアップは持ち球の1つ。左打者には決め球に使っていた。ただ、シュート回転するため右打者にはほとんど投げていない。シュート回転せずに落ちる球種は、フォークやスプリットなど習得を目指したものもある。だが、完全習得には至らず。今季中からチェンジアップのリニューアルを模索した。今回投じたのは、同じ握り方でも、指をかける箇所を変え、シュート回転しないように工夫したものだ。見守った畝投手コーチは「引っ張りの打者に利く。内角真っすぐの後ではタイミングが取りづらいんじゃないか」と認めた。

 試運転は上々。手応えを得て、来月2日に侍ジャパンに合流する。「プレミアに限らず、これからにつながる」。常に挑戦を続ける右腕が、新たな武器を加えて世界に挑む。【前原淳】