中日から国内FA宣言した高橋聡文投手(32)の阪神入団が濃厚になっていることが12日、分かった。この日から交渉が解禁され、早々にアタック。明日14日に大阪市内のホテルで入団交渉に臨むことが球団から発表された。現役時代に対戦した金本知憲監督(47)は「ジェフみたいにグイグイ向かっていく印象」と強心臓を評し、V戦士の助っ人左腕ウィリアムスになぞらえた。高橋側にオファーしている他球団はないとみられ、虎入りに支障はない。

 覇権奪回を目指す金本新体制の「補強第1弾」が現実味を帯びてきた。9日に国内FA行使の申請書を提出していた中日高橋聡の獲得が濃厚な情勢だ。この日から交渉が解禁になると、早速、高野球団本部長が連絡を取る。電光石火のアタックで誠意を示した格好だ。お互いのスケジュールを確認し、明日14日に大阪市内のホテルで入団交渉に臨むことが早々と決まった。

 高橋聡はこの日から鳥取市内で自主トレを開始したばかりだが、自ら阪神のお膝元である関西に出向く。同本部長は「できるだけ早くと思います。双方の相談で、そうなりました」と話すにとどめたが、高橋聡が好印象を抱いているのは間違いないだろう。同本部長が中心となって交渉にあたる方向。この日、高橋側には他球団から獲得オファーが届いていないとみられ、相思相愛ムードすら漂う。

 高橋聡は04年から1軍に定着し、中日の左腕セットアッパーとして活躍。通算401試合に登板した中継ぎのスペシャリストだ。この日、安芸キャンプを指導する金本監督も「できるだけ補強はせずに勝つのが理想ですけど、本当に足りないところは補強しないといけない」と説明した。今季1軍で奮闘した左投げの救援は52試合に登板した高宮1人だけ。接戦を制すためにも、ワンパーツ足りず、手薄な状況に陥っていた。

 熱視線を寄せる高橋聡の魅力を誰よりも知るのが、金本監督だ。現役時代は何度もリリーフでぶつけられた。球威ある速球で押すキラーぶりに圧倒されたこともあった。優勝した05年には6打数無安打、3三振。持ち味をこう評する。

 「昔、球が速かったよ。ガッツがあるタイプ。負けん気が強く向かっていく。タイガースの投手に合っている。ジェフ(ウィリアムス)みたいな感じかな。メンタルとしてはジェフみたいにグイグイ向かっていくタイプという印象がある」

 強心臓でなくては、修羅場を乗り越えられない。指揮官が例に挙げたウィリアムスも心意気全開のマウンドさばきで中継ぎ、抑えと活躍し、2度の優勝に貢献した。高橋聡の小気味よい投げっぷりは、どこか優良助っ人にダブる。指揮官がもっとも大切にする「戦う姿勢」を備えた男だろう。

 指揮官は高く評価し、フロントに交渉を一任する方針だ。推定年俸は3000万円でFA補償がかからないCランク。脂の乗った32歳左腕が加われば、弱点克服の大きな戦力になる。阪神入りに向け、さえぎる障壁はまるで見当たらない。

 ◆高橋聡文(たかはし・あきふみ)1983年(昭58)5月29日、福井県高浜町生まれ。富山・高岡第一では2年春にセンバツ出場し初戦敗退。01年ドラフト8巡目で中日入団。10年はセットアッパーとして自己最多63試合に投げ、リーグ優勝に貢献。176センチ、85キロ。左投げ左打ち。