阪神が今季までオリックスでトレーニング兼コンディショニングコーチを務めた本屋敷俊介氏(40)を1軍トレーナーとして招聘(しょうへい)することが24日、分かった。同氏は、再起不能と言われた左膝の手術から清原和博氏を復活させるなど数々の実績を持つ。金本監督が進めるトレーニング改革に合致する球界の名トレーナーが、戦闘ボディーを作りを支える。

 金本阪神が、奇跡を呼ぶ名トレーナーの獲得に成功した。今季まで15年間、オリックスを支えた本屋敷氏は、左膝の故障に苦しんだ清原氏が「本屋敷がいなかったら、僕は2度とグラウンドに立てなかった」と一番の恩人に挙げる人物。最強の復活請負人が、1軍トレーナーとして入閣する。

 清原氏はオリックス移籍2年目の07年、2月に左膝手術を受けたが回復が見込めず、引退を決断しかけていた。だが5月から専属でリハビリ担当となった本屋敷氏が「絶対にあきらめないでください。最後のわがままを聞いてください」と涙で説得。米国で6年間学んだスポーツ医学の知識をもとに奔走し、左膝に大腿(だいたい)部の軟骨を移植する高難度の手術が可能な医師を探し当てた。

 当時、軟骨移植手術を受けて再起したスポーツ選手は世界でも前例がなかった。その上かなりの重傷で、担当医も「奇跡が必要です」と失敗なら即引退の超ハイリスクと説明。清原氏は本屋敷氏を信じ「一緒に奇跡を起こしてくれ」と野球生命を預けた。

 壮絶な手術は見事成功し、清原氏は1年に及ぶリハビリを経て翌08年8月に1軍復帰。軟骨移植手術から再起した初のスポーツ選手として前例をつくり、全てをコーディネートした本屋敷氏も感激の涙に暮れた。

 リハビリ分野だけではなく米国で学んだトレーニング分野でも数々の実績がある。野球のパフォーマンスに直結する効率的なハードトレーニングを追究。T-岡田は筋力アップで肉体改造し、10年の本塁打王に導いた。入団時のひ弱な体を鍛えられ、3度の2桁勝利&1億円プレーヤーに育った西も、「チームの不振で本屋敷さんが今年退任されたのは僕たちの責任です」と唇をかむほど、ナインの信頼は絶大だった。

 阪神首脳も「故障させない体づくりはもちろん、故障してもケアできる十分なノウハウ、人脈がある。何と言っても金本監督の進めるトレーニング改革にも合致して、大きな戦力です」と期待の大きさを口にする。来春キャンプでは1クールに2日間、個別練習を行わずに筋力トレーニングを採り入れる。熱いハートを備えた球界屈指のトレーナーが、金本改革を支える。

 ◆本屋敷俊介(もとやしき・しゅんすけ)1975年(昭50)4月12日生まれ、大阪府出身。大手前高野球部からトレーナーを目指し、カリフォルニア州立大に進学。6年間学び、00年にマリナーズの研修生となる。後のイチロー入団でオリックス関係者と知り合い、01年にオリックスに入団してトレーナー。04年からコンディショニングやトレーニングコーチなどを歴任し、今季限りで退団。170センチ、62キロ。右投げ右打ち。