大ヒットドラマ「下町ロケット」の主人公、佃航平のように、中小企業の熱い2代目社長を目指す。東都大学野球リーグ4年生の進路が29日、ほぼ出そろった。今秋の明治神宮大会で日本一に輝いた亜大の丸山高明外野手(4年=玉野光南)は、父明氏が社長を務めるシティライトに入社する。将来は家業を継いで2代目社長に就任する予定だが、まずは都市対抗出場を目指し地元岡山で野球に打ち込む。

 今秋のリーグ戦通算2安打だった丸山は、明治神宮大会準々決勝の直前、登録変更で急きょベンチ入りした。立命大戦に「6番左翼」で即先発すると、マウンドには初戦で18奪三振完封した巨人ドラフト1位の桜井俊貴投手(4年=北須磨)が立っていた。

 4年間、チーム内競争を続けてきた苦労人が、日本を代表する“大企業”に立ち向かうチャンス。「気持ちでは絶対に負けないと思った。積極的にいきました」。2回1死一塁から、右翼線に適時二塁打を放ち、貴重な先制点を挙げた。「巨人のドラフト1位ですから。自信になります」と笑みがはじけた。決勝は「3番右翼」に昇格し、「未来の社長」は、一躍大学日本一の立役者になった。

 甲子園優勝などの実績を誇る選手が集う東都大学リーグでも、「2代目社長」の座を約束された選手はそうはいない。自動車売買業を営むシティライトは、85年に父明さんが創業した。08年には岡山市内35年ぶりとなる社会人チーム「シティライト岡山」を創部。当時中学生だった丸山は、創部時にグラウンドで聞いた父のスピーチを忘れない。

 「『岡山を、車だけじゃなくてスポーツで活発にしたい』と言ってました」と記憶する。地元への、野球への熱い思い。「仕事している時は、家では見せない顔で格好いいなと思います」。父がつくったチームでプレーする道を選んだ。

 「下町ロケット」同様、経営者は誰しも苦しみを味わうことがある。「景気が悪い時は、社員さんの家族のことを考えている。こういう人が社長になるんだと思いました。不安ですけど、父を超えられるような社長になりたいです」。亜大では休日も午前6時から自主練習を続け、練習中は誰よりも大きな声を出した。努力が実った最後の秋。社長業でも、ドラマのようなハッピーストーリーになれば最高だ。【前田祐輔】

 ◆丸山高明(まるやま・たかあき)1993年(平5)9月30日、岡山市生まれ。福島小3年からソフトボールを始め、福南中から「岡山メッツ」で投手兼外野手として硬式野球を始める。玉野光南では2年夏に岡山大会準優勝。3年夏は8強。高校通算9本塁打。家族は両親、弟。178センチ、85キロ。右投げ右打ち。