鉄人がニッカンでぶっちゃけた! 今季から阪神の指揮を執る金本知憲監督(47)が7日、四藤慶一郎球団社長ら球団幹部とともに大阪・中之島の日刊スポーツ新聞西日本を訪問。新年のあいさつをかねた表敬訪問だったが、重責を背負う監督としてキャンプ、開幕を迎える心境を本音で明かすなど、現役時代に掲載した本紙人気コラム「ぶっちゃけトーク」ばりに思いの丈を語った。

 新春に行ったマスコミ各社への表敬訪問。その大トリとして、金本監督は日刊スポーツに足を運んだ。広島から移籍してきた当時から数年間、コラム「ぶっちゃけトーク」を展開し、紙面をにぎわせた金本監督と本紙の間柄。当時を思い出させるようなトークを展開した。

 最初のテーマは本紙が昨年末に行った阪神アンケートについてだ。ここで阪神ファンからの「支持率95%」という驚異の数字をたたき出したことに苦笑を浮かべた。

 「まあ最初ですからね。だんだん下がっていって最後は9・5%ぐらいになるかな…」。熱しやすく冷めやすい? 虎党、マスコミの状況をよく知るだけに、少々、自虐的に笑わせた。

 そんな中で新指揮官が目を輝かせたのは就任以来、自身もテーマにしている若手育成だ。江越、梅野と1軍経験の多い若手に続いて4年目の北條に注目が集まっていることに着目した。

 「彼は去年、2軍で10本、本塁打を打ってるんですね。でも身体能力はまだまだというか、あまり鍛えられていない。それでこれだけ打つんだから面白い。鍛えがいもある。遊撃という守備位置の問題はあるけど打てるのならセカンド、あるいはサードで使うという手はありますよ」

 自ら「阪神生え抜きでは86年以降、30本塁打した選手がいない」という数字も持ち出し、北條を始め、新たな長距離砲の登場に期待をかけた。そんな若手全体に関して、キャンプ、オープン戦を通じての見方も示した。

 「なかなか決まらないでしょうね。誰を使うかとかは。3月のはじめで決まればいいけど開幕ギリギリまでかかると思う。いっぱいいい選手が出てきて、選ぶのに苦労するかもしれないし、逆にだれも出てこないやないかと、困るかもしれないし(笑い)」

 2月1日のキャンプイン、3月25日の開幕と本番を控えた年明け現在の心境についても率直に話した。

 「キャンプは楽しみだけど開幕は怖いですね。(シーズンは)勝ちにいかないとダメですから。就任当初は1、2年我慢するからという周囲のムードだったけど、だんだん変わってきましたからね」

 そこには勝負師ならではの見方もある。

 「阪神がいま過渡期なのは間違いない。暗い話をさせてもらえば、今年は勝てないと言っていても、来年、再来年はもっと苦しくなると思う。福留、鳥谷、能見、メッセンジャーといった主力が年を取っていくわけですから。若手が出てこないと本当に苦しい」

 そんな状況も承知した上で引き受けた監督の座。「根性」「執念」という勝負に絶対に必要とするポリシーは伝えつつある。

 「秋季キャンプでもここは絶対に三振するなというサインを出したりしました。状況によって、やることは違いますから。2死走者なしで8番梅野のときに、粘って粘って四球を選んでも仕方がない。本塁打を狙って、三振に終わったとしてもそれはそれでチームプレーだから」

 野手全体を引っ張るべき存在である鳥谷についても話した。就任以来、金本監督が「今のままでは物足りない」と指摘している不動のレギュラー。代名詞のように出てくる『フルイニング出場、連続試合出場』について監督自身の考えをハッキリと明かした。

 「よく知らない人の間では、オレが自分の記録を抜かれたくないから彼を休ませるのでは…なんて言われているようだけど、そんなことはないですよ。というか、もともと、鳥谷の記録はそこまで来てないと思うし。万が一、昨年のように体調不良のときがあったりして、万全でないとき、そのときの鳥谷の状態と他の選手の力を比べてどうかという話でしょう」

 あくまで、個人の記録を優先させて起用する意思のないことは明確にした。その上で「鳥谷の打順については面白いことを考えています。4番? それはないですけどね」と含みを持たせた。

 現役、評論家時代を通じて培ってきた金本イズムを浸透させながら臨む1年目の戦いが近づいてきた。「選手に嫌われてもいい。嫌ってもらって結構だから。好かれようとも思っていない」。アニキと呼ばれ、選手、ファンに親しまれた男は人生の次のステージへ向け、覚悟を決めている。【編集委員・高原寿夫】

 ▼阪神の生え抜き打者が今季30本塁打以上を記録すれば、日本一となった85年の掛布40本、岡田35本以来31年ぶり。この間05年に今岡が29本塁打し王手を掛けたが、あと1本が出なかった。また90年八木、00年新庄、04年今岡が各28本と大台に迫った。

 ▼鳥谷は現在、プロ野球4位の575試合連続全イニング出場を継続中。今季も継続すれば3位衣笠祥雄678試合、2位三宅秀史700試合を抜いて単独2位となる。なおプロ野球最長の金本1492試合まで、あと917試合。今後も年間143試合を行うと仮定すれば、鳥谷が満41歳となる22年のシーズンまでかかる。