アーべーを探せ! 巨人阿部慎之助内野手(36)が20日、国内自主トレに向けて宮崎入りした。2月1日のキャンプインに照準を合わせず、超スローペースでの調整を宣言。現段階では15%の仕上がりで、個別調整が認められた宮崎キャンプでは「消えるよ。『ウォーリーをさがせ』みたいに」と周囲に埋没する構えだ。シーズンを通して100%に近いパフォーマンスを披露することを念頭に、あえて消える。

 陽気な笑顔、存在感ある肉体、どこまでも目立つ阿部が宮崎キャンプで雲隠れする。高橋監督からベテラン待遇として別調整が認められたS班での始動。思い描くプランがある。「ラミちゃん(DeNAラミレス監督)は姿消していたよね。オレも『ウォーリーをさがせ』みたいに消えるよ」。当時は助っ人だった同僚は全体を離れ、自分のリズムを刻んだ。神出鬼没で周囲も気付かぬほど。阿部もならう。

 照準を明確に定めている。「キャンプですごくても、この年齢じゃ評価されない。人間100%が早すぎると壊れるから」。捕手から一塁手転向の昨季は飛ばしすぎて2月中旬に右ふくらはぎ痛の故障。実戦復帰が1カ月遅れた苦い思いがある。

 先立って行った約2週間のグアム自主トレでは眠っていた肉体を試運転させた。オフに103・8キロまで増えた体重を、まずは97キロまでそぎ落とした。「ボディーは全然仕上がっていない(笑い)。今は15%ぐらい。キャンプインで50%、沖縄キャンプで60~70%、開幕で80~90%かな」。脳裏に折れ線グラフを引いた。言わずもがな、シーズンの勝負どころに100%を持っていく。

 肉体と慎重に対話するのも、愛着ある捕手で本格的な起用構想があるから。高橋監督は「捕手をして休み休みなら一塁。捕手でも使うなら、最低100試合出場が条件」と話しており、キャンプを通じて意思確認を行う。阿部も「ブルペンには入りますよ」と捕手練習を望んでいる。

 「そろそろやった方がいいな、と思っても抑えるぐらいにする。毎年、試しながらだね」。答えは年々、隠れる場所が変わる。16年ペナントレースという壮大な絵本の最終ページには、笑顔で手を振るアーベーの姿が見つかるはずだ。【広重竜太郎】

<阿部の春季キャンプ>

 ◆11年 第2クールから独自調整が認められる1軍S班に加入。ブルペンで多くの投手の球を受ける時間をつくり、積極的に助言。

 ◆12年 S班廃止により1軍で調整。FAで新加入した杉内と村田と重点的にコミュニケーションを取り、チームに溶け込ませた。

 ◆13年 3月のWBCに備え、打ち込みを重視。約2週間でチームを離れ代表合宿へ。

 ◆14年 打撃投手を務めた松井秀喜臨時コーチに、状態の良さを絶賛された。阿部も打撃投手となり、松井臨時コーチと対決した。

 ◆15年 一塁転向して初のキャンプは打撃練習に時間を割いた。第4クールに右ふくらはぎの張りを訴え別調整。