4年ぶりに古巣復帰した阪神藤川球児投手(35)が、節目の1歩を刻んだ。14日、沖縄・宜野座での紅白戦に先発。直球の最速は147キロにとどまったが、2回無失点に抑え、カーブやフォークなどを駆使して貫禄を示した。試合前はメジャー式の単独調整を認められ、独自のリズムで試合に臨んだ。登板後は5イニングを投げる想定で「おかわり」のブルペン投球。先発ローテーション入りへ、再出発のマウンドで躍動した。

 新しい自分に出会う再出発のマウンドで、藤川の剛腕ぶりは健在だった。1回1死後、緒方への3球目は内角への146キロ。止めたバットをへし折るなど、球威を示した。二塁打を許したが、西岡と新井を力でねじ伏せ、後続を断った。最速147キロで2回無失点。冷静に振り返った。

 「打者とは去年の9月以来でおよそ半年。まだまだです。(打者の反応は)まだ参考にならない。これからですね。まだまだ、これから始まる。野球の調整や打者との感覚はこれから」

 昨季、独立リーグ高知で先発を重ねたが、阪神時代の公式戦で最後に先発したのは03年9月19日巨人戦。かつての絶対的守護神は変化も見せた。1回の緒方、2回のぺレスには走者がいない展開で初球カーブから入る。フォークやスライダーも駆使。香田投手コーチも「素晴らしい。いろんな球種を試していた。フォークが良かった」。新スタイルを模索し、金本監督も「いい当たりもされていたけど先発に変わって(力の)配分がどうなるのか」と注目する。

 先発としてメジャー流の調整法で臨んだ。午前中、試合メンバーの投手はキャッチボールなどを行うが藤川の姿はなし。1人で体を動かし、試合開始の30分ほど前に遠投、ブルペン投球を行い、マウンドに向かった。「米国で、たくさん見てきた。監督、コーチもそれで構わないとのことだった」。広島黒田と同じ調整法で、マウンドに立った。

 登板後は10球以上の投球をブルペンで小刻みに繰り返す。首脳陣には「5イニングくらい投げる感覚でいきます」と説明。スタミナを養う意図だった。「3月に入って監督からどういう指示が出るか分からない。まだまだ鍛えるキャンプ」。球威、制球、配球ともに光った26球のデモ投。相変わらず存在感は際立っていた。【酒井俊作】

 ◆広島黒田の調整法 本拠地での試合では開始約4時間前に始まる全体ウオーミングアップには参加しない。同3時間前に球場入りして、室内でストレッチなどで入念に体を動かす。同40分前にグラウンドで遠投を行い、プレーボールに備える。また、復帰前年まで先発投手は遠征同行が基本だったが、球団から調整を一任され、同行せず広島で調整を続けた。