ギータのバットからようやく快音が響いた。ソフトバンク柳田悠岐外野手(27)が西武との練習試合(宮崎アイビー)で新外国人C・C・リー投手(29=インディアンス)から左中間へ三塁打。今季実戦6戦目、15打席目でようやくの初安打をマークした。昨年11月に手術した右肘の回復は遅れ気味だが、指名打者起用が有力なシーズン開幕に向け、1軍のオープン戦に出場していく。

 柳田らしい打球だった。5回の第3打席。西武の新助っ人C・C・リーの外角150キロの直球を捉えると、豪快なライナーが左中間フェンスに突き刺さった。昨季32盗塁の快足で、迷いなく二塁を蹴り、一気に三塁へ滑り込んだ。それでも、打撃内容について問われると本人は首をひねるばかり。まだまだ本調子とはほど遠いようだ。

 15日、B組の社会人パナソニック戦での遊ゴロから始まり、14打席で四球1つ。あとは凡打を重ねていた。打ちたい気持ちが強すぎるのか、右肩の開きが早い打撃フォームになっている。引っ張り傾向が強まっている中、外角球を逆らわず左方向へ強く運べた三塁打は、復調への大きな一打となりそうだ。

 工藤監督は「一番ホッとしているのは本人じゃないか。1本出れば変わるからね。肘のことは急ぐことはないと本人には伝えている」と苦しむ柳田を思いやった。キャンプ中盤まではキャッチボールを行うなど順調だったが、急ぎすぎたのか右肘が張った状態が続き、以降はノースロー調整。現在はキャッチボールを再開しているが、痛みがある日もあり、回復は遅れている。

 それでも、今季も不動の3番として、日本一3連覇へ導かなければならない。調整を続けてきたB組には残らず、今後は1軍でリハビリと並行しながら、打席を重ねていく。藤井打撃コーチは「スイングはできている。後は上(1軍)で戻していく」と、1軍投手相手の変化球やクイックなどへ対応し、試合感覚を研ぎ澄ましていく考えだ。

 今キャンプはほぼB組で過ごし、プロ入りから育ててくれた藤本2軍打撃コーチとロングティー打撃を繰り返した。4年目の右打者真砂の飛距離に驚かされ、かわいがるようになった。1軍定着を目指し振り込んだ2軍時代、原点を思い出すキャンプとなった。

 投げられなくても、打撃と走塁は欠かせない戦力。開幕に向け「しっかり振ること」と、自分が思い描くスイングを続け、調子を上げていく。【石橋隆雄】

<柳田の今キャンプ>

 ◆1日 B組スタート。フリー打撃とロングティーで計103発の柵越え。

 ◆2日 打撃練習だけA組に合流。フリー打撃は50スイングで8本の柵越え。

 ◆3日 B組恒例の朝の声出しに初挑戦。今季の目標40-40(40本塁打、40盗塁)を掲げた。

 ◆5日 ランチ特打でファンを沸かせ、帰り際に即席サイン会。

 ◆7日 育成吉本とすべて直球の真剣勝負。20球ほどで柵越え5本。

 ◆10日 B組シート打撃に参加し3打席で2安打。

 ◆14日 B組シート打撃で新外国人スアレスと対戦し、三邪飛。

 ◆15日 B組のパナソニックとの練習試合で今季初実戦。4番指名打者で遊ゴロに倒れ交代。

 ◆25日 B組の練習試合、巨人戦に4番指名打者でフル出場したが、4打数無安打。3打席目は一塁への強烈な当たりを二塁手が捕球し凡退。