金本阪神の4月戦線は悪夢の9回逆転サヨナラ負けで始まった。4回の1点援護を背負い、先発能見篤史(36)は8回まで3安打無失点と力投しながら9回、先頭筒香に同点ソロを浴びた。なおも2死一、二塁として降板し、2番手歳内が代打下園にサヨナラ打を浴びた。延長12回引き分けに終わった前日の分まで、2日分の疲労がぶり返した。

 DeNAファンの歓声が漏れ聞こえる三塁側ベンチ裏。いつもは冷静だった金本監督が、就任後初めて悔しさをあらわにした。監督として味わう、初めてのサヨナラ負け。それも1点リードの最終9回に逆転された。ベテラン能見の男気(おとこぎ)を、勝利に結びつけることができなかった。もどかしい思いが、敗戦の弁からにじみ出た。

 金本監督 (9回先頭の)筒香の入り方だけ。あそこだけだった。失敗は。失敗というか、負けたのは、勝負で。(それ以外は)ほぼ完璧。

 完封劇が、ハッピーエンド直前で暗転した。8回まで3安打でゼロを並べた能見が向かった9回のマウンド。107球目、先頭の4番筒香への初球直球は高めに浮き、左中間スタンドまで運ばれた。痛恨の同点ソロ。さらに安打と四球で2死一、二塁となり、ベンチは2番手歳内にスイッチした。歳内は代打下園に高めに浮いたボールを捉えられ、左翼越えのサヨナラ打。悲しすぎる結末だった。

 能見 そう簡単には終わらないですね。振り返ったところで、返ってこない。いろいろと強弱をつけていったんだけどね。

 「チームのピンチにすごくいいピッチングをしてくれた」という香田投手コーチは、マテオが登板可能でも9回は能見続投だったかと問われ「ですね」とこたえた。能見が奮闘したベースには、事実上の「守護神不在」があった。

 前夜は神宮で5時間12分のロングゲームを戦った。守護神マテオが9回から3イニングを投げる壮絶な試合は結局ドロー。ブルペンには1軍昇格したばかりの右腕金田しか残っていなかった。都内からチームバスが横浜の宿舎に着いたのは午前0時10分。疲弊したブルペン陣を救うべく、ベテラン左腕は横浜のマウンドを1人で投げきるつもりだった。首脳陣も、背番号14も、腹をくくっていた。

 能見 気持ちはそうだったんだけど難しい。まあ、次につながるとは思う。

 7回裏あたりから雨が強くなり、風も強くなった。左手に息を吹きかけてマウンドに立ち続ける能見の思いは報われなかった。3連勝の後、延長12回ドローをはさんでの連敗で、ついに勝率5割。3年目岩貞が先発する今日2日も、マテオの登板は微妙な情勢だ。神宮に続き横浜でも、目の前にあった白星を取りこぼした。長いシーズンで最初の苦境が訪れた。【桝井聡】