キャプテンがけん引しての猛虎打線が爆発した。阪神鳥谷敬内野手(34)が、2回の今季1号3ランを含む自身最多の1試合6打点。ともに今季チーム最多となった19安打12点の猛攻の軸となった。金本阪神の超変革キーマンが復調し、直接対決で広島に打ち勝ち、3位に浮上した。

 鳥谷が満月に向けて、打ち上げた。黄色い大歓声と赤い悲鳴が交錯する。金本監督の故郷で初采配。「超変革」の象徴を託されたキャプテンが、指揮官に記念星をささげた。

 「打者有利のカウントだったので、思い切って打ちにいけましたね」

 3点先制を逆転された直後の2回表。暴投で同点として2死二、三塁。カウント3-1から広島横山の真ん中141キロ直球を見逃さなかった。今季94打席目での初アーチは勝ち越しの右越え3ラン。アドレナリンが湧き出た表情でダイヤモンドを駆け抜けた。

 「興奮して、眠れなかった夜は初めてかもね」

 3年前の13年3月8日。WBC2次ラウンド初戦の台湾戦。1点を追う9回2死一塁で二盗を決め、井端の適時打で起死回生のホームを踏んだ。あと1アウトで敗退という瀬戸際から、奇跡の逆転勝ちを収めたナイター後。日が替わって都内の選手宿舎に着き、布団をかぶって驚いた。「いつでもどこでも、すぐ寝られる」という男が数時間、睡眠に入れなかった。

 「長い試合の後で、次の日も朝早くから練習だったのにね。あそこまで興奮したのは初めてだったから」

 あの興奮を、熱さを、もう1度味わいたい。11年ぶりのV奪回へ。最高に熱くなれる瞬間を追い求めて、日々勝利に執着している。

 「とらえたと思ってファウルになったり、バットを止めにいって振ってしまったり…。感覚とズレが生じている部分はあったね」

 もう不振にオサラバだ。1回と5回に犠飛を決め、3回には左前適時打。金本監督は「だいぶ右翼側に引っ張ったファウルを打っていた。今日は違うなと。ああいうファウルは今年初めて見たから」と納得顔だ。

 プロ13年目で自己最多の1試合6打点には「まあ、明日も頑張ります」と気にも留めず「勝てたことが良かった」。ルーキー高山が4安打を放つなど今季最多の12得点19安打を記録し、首位巨人に1・5ゲーム差の3位に浮上。若さと経験の絶妙な融合に、ワクワク感がある。【佐井陽介】

 ▼鳥谷の1試合6打点は、プロ13年目で自己最多。これまでは5打点(08年1度、10年1度、13年2度)が最多だった。1試合に4打席で打点をマークしたのは10年8月29日ヤクルト戦、12年5月30日ロッテ戦に次いで3度目で、1試合4打席連続は初めてだ。