若虎たちが、“しくじり”を力に同点劇を演じた。阪神は2点を追う9回裏、先頭ゴメスが8号ソロで1点差に迫った。さらに北條が左前打で続いた。北條は7回の好機で代打に送られるも、バント失敗の三振に倒れていた。負ければ、敗因になるミス。帳消しとはいかないまでも意地を見せる一打だった。

 大和の犠打で1死二塁となると、江越が代打で登場した。前日27日に手痛い落球(記録は安打)に見逃し三振。精彩を欠くプレーを見せ、金本監督に懲罰交代を命じられていた。この日も16試合ぶりにスタメン落ち。悲壮な思いで臨んだ打席で左前打を放ち、1死二、三塁と好機を広げた。

 ここで代打は原口。前日27日に育成から支配下登録され、いきなり1軍で初安打を放ったシンデレラボーイ。今度は沢村の148キロ直球を同点の中犠飛とし、初打点もつけた。「真っすぐを振りまけないように。与えられたところでしっかり出来たんで、良かったと思います」。金本監督も「ええ根性しとるね。初球から行ってね。度胸を買ってあげたい」とたたえた。

 1戦目を藤浪で落とし、前日の第2戦は11失点の大敗を喫した。3戦目も勝てなかったが、金本監督は「負けなかったということ。菅野の試合で。1つも勝てなかったという見方もあるけど、選手には前向きにプラスに考えてほしい」と語った。前日の試合後は「恥ずかしい試合、一番情けない試合」と嘆いたが、ミスをした若手の奮起で一矢報いた。そこに大きな意味があった。【梶本長之】