お茶の間のビデオ判定なら、セーフじゃないような…。5点差を追いついた阪神は7回1死満塁、二塁前のゴロを名手大和がポロッ。すぐに本塁へ送球も、判定はセーフ! 微妙なタイミングだったが、ビデオ判定もなく、勝ち越し点を献上。3試合連続完封から一転、10失点に沈んだ。今季初の4連勝を逃し、4位に転落した。

 五月晴れの甲子園が、重い空気に包まれた。3回までの5点ビハインドをはね返し、同点で7回に入った。4番バレンティンからの攻撃だ。金本監督は勝ちパターンのドリスを投入した。主砲を抑えるまでは良かった。だが、雄平に四球を与えると雲行きが怪しくなる。連打され、たちまち1死満塁の窮地に陥る。

 内野は前進守備を敷く。中村のゴロは二塁正面へ。だが、わずかにバウンドは高くはずみ、名手大和のグラブからこぼれた。すぐに本塁送球。三塁走者の雄平もスライディング。際どいタイミングだったが、杉本球審は両腕を広げる。金本監督が駆け寄り、ビデオ判定の有無を確認したが、セーフのジャッジは覆らず、試合は続行された。

 金本監督 満塁になったけど、あれもちょっとイレギュラーした。イレギュラーなかったら、ホームゲッツー取れたかもしれん。(クロスプレーは)完全にアウトに見えたけどね。(ビデオ判定は)フォースプレーに関してはないということ。一応、確認としてね。

 今季から本塁打だけでなく、本塁でのクロスプレーでも審判団に疑義があればビデオ判定を導入するが、原則的にフォースプレーでは適用されない。勝ち越し点を奪われると、ドリスは両手で頭を抱えて落胆した。3連投で、気落ちしたセットアッパーに余力は残っていない。連打でKOされ、この回は一気に5点を失い、勝負は決した。

 前日6日まで、46年ぶりに球団最長タイとなる3試合連続完封勝利を収めていた。肝心の終盤をしのげず「魔の7回」に守り負けた。奮闘してきたドリスは来日初黒星。「必要として使ってくれている。全然、疲れはない」と振り返るが、徒労感が募った。失策を犯した大和も「自分が一発で捕っていれば、そんな難しいジャッジになっていなかった」と反省していた。3連勝で止まり、再び4位に後退した。

 それでも、指揮官は前を向く。「いつもいつも、0点で抑えられるわけではないんだから。3試合、0点で来ているんだから。『今日は投手が』と言ってはいけないと思うし、思ってもいない」。劣勢をはね返す反発心を示したのは事実だ。仕切り直して、再び上位をうかがう。【酒井俊作】

 ◆コリジョンルール 本塁での危険な衝突(コリジョン)を避けるための規定。走者が故意に捕手に接触しようとした場合はアウトになり、捕手がボールを持たずに走路をふさいだ場合は得点が認められる。これにともない、本塁でのクロスプレーにもビデオ判定を採用。ただし、本塁でのフォースプレーにはこのルールを適用しない。