まるでリプレー映像のような、2打席連続の超特大アーチだ。ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(31)が、1回に13号2ラン、3回に14号3ランと、2打席連続でバックスクリーン越えの推定140メートル弾を放った。1試合2発は14年8月3日の中日戦以来で、2打席連続は同4月20日の阪神戦以来。1試合複数本塁打は通算24度目で、ラミレス(現DeNA監督)を抜いて球団新記録とした。チームは9回1死二、三塁から今浪の中犠飛でサヨナラ勝ち。連敗を3で止めた。

 乗りに乗ったご機嫌なバレンティンが、こんな“獲物”を見逃すわけがない。逆転された直後の3回無死二、三塁。1ボール1ストライクから、真ん中高めに134キロの直球が吸い込まれるように入った。

 打球は、バックスクリーンを越え、スコアボードの下にある「TOSHIBA」の看板付近に着弾。豪快なフォロースルーを決めて、両手に残った感触を確かめるように、ゆっくりと一塁に走りだす。推定140メートルの特大本塁打に「ちょー気持ちいい」と興奮。引退した水泳の元金メダリスト、北島康介氏の名言を引用して喜びを表した。

 1点先取した直後の1回1死二塁からの第1打席は、高めに入った136キロの直球を、同じく「TOSHIBA」の看板付近にたたき込んだ。捉えた球種、打球方向、飛距離…リプレー映像のような2連発に「パワーヒッターというのは、打ち出すとポンポン出るもの」とご機嫌だ。

 13年に日本プロ野球史上最多の60本塁打を放ったが、その後はケガに苦しんだ。14年ぶりに優勝した昨年は、左大腿(だいたい)直筋の肉離れで長期離脱し、出場15試合でわずか1本塁打に終わった。3連敗、今季最多の借金6で迎えたこの日は、打線を大幅に改造。昨年優勝の象徴だった「2番川端」を、14年7月29日以来の5番に置くなどテコ入れした中で、バレンティンは4月12日以来不動の4番を守り続ける。

 通算24度目の1試合複数本塁打は、球団新。「正直記録は知らなかったよ。更新はうれしいけど、一番はチームが勝ったこと」と、サヨナラ劇を喜んだ。逆転優勝した昨年も最大借金は6。前半戦とはいえ、デッドライン間近だったチームを、最強助っ人の2発が勢いづけた。【前田祐輔】