打球が中前へ抜けたのを見届けるや、ヤクルト畠山は右拳を力強く突き上げながら一塁へ走った。同点の9回1死満塁、外角スライダーに食らいついた。直後、歓喜の輪の中心でもみくちゃに。「三振は最悪、前に飛ばそうと。川端、何やってんだ! こんな場面で立ちたくねーよ! と思いながら打席に入りました」。お立ち台では、直前にいい当たりが中堅正面を突いた川端の悔しさを、愛あるいじりで笑いに変えた。

 本心では、何とか決勝打を打ちたかった。昨季の打点王が、今年は腰痛や背中の張りなどで出遅れた。戦線に戻ってきたのは5月に入ってから。「みんなに迷惑を掛けた。まだホームランいっぱい打てますって感じじゃない。カッコよく決めたいとかはなかった」。今の自分にできるのは、きっちりつなぐこと。その意識が実を結んだ。

 前夜に続く最高の幕切れ。ヤクルトの連続サヨナラ勝ちは、3試合連続をマークした09年6月以来7年ぶりだ。「このまま1年が終わるとは思ってない。理想とのギャップを、練習で埋めていく。また中軸に入りたい」。この日のヒーローは6番畠山。まだまだ満足していない。【鎌田良美】